一年戦争が短期終結せず、宇宙世紀0080年代まで戦争が長期化した世界において、ジオン公国軍は陸戦・宇宙戦の双方で高い機動打撃力を発揮したドム系列の再評価を進めていた。MS-09ドム、MS-09Rリック・ドムは重装甲と高推力による一撃離脱戦で大きな戦果を上げたが、戦争の長期化により、単なる重突撃機ではなく、次世代の高機動汎用機として再設計する必要が生じていた。
その発展計画として開発されたのが、MS-20 ドムⅢ試作機である。本機はリック・ドム系の重装甲・高推力思想を受け継ぎつつ、ゲルググ以降のビーム兵器運用能力、ガルバルディ系で蓄積された機体制御技術、そして次世代型フレーム構造の検証要素を取り込んだ機体であった。のちにRMS-099「リック・ディアス」と呼ばれる機体の原型にあたる存在であり、ジオン系重MSの到達点として位置づけられる。

最大の特徴は、ドム系特有の重厚なシルエットを維持しながら、運動性を大きく向上させた点にある。大型化した背部推進器と分散配置された姿勢制御スラスターにより、重MSでありながら軽快な機動戦を可能とし、敵艦隊への強襲、拠点防衛、エース部隊による突破戦に投入されることが想定されていた。
装甲材には新型複合装甲の試験材が採用され、被弾時の耐久性と整備性の両立が図られた。また、武装面ではジャイアント・バズやビーム・ピストル系兵装の試験運用が行われ、従来の実体弾重視から、ビーム兵器を併用する次世代重MSへの移行が進められた。特に近中距離での高火力制圧能力は高く、ゲルググ後継機とは異なる「重装甲高機動機」としての独自路線を築いている。
一方で、MS-20は試作機としての問題も多かった。高出力化された推進器は整備負担が大きく、機体重量に対して制御系の調整が難しいため、一般兵向けの量産機としては扱いにくかった。また、新型装甲材や高出力ジェネレーターの生産性にも課題があり、前線全体へ配備するよりも、熟練パイロットや特殊任務部隊向けの高級機として評価された。

それでも、本機が残した設計思想は極めて重要である。ザク系が「兵器体系の継承」、ガルバルディ系が「次世代汎用機への橋渡し」だとすれば、MS-20は「ドム系重MSを次の時代へ進化させるための回答」であった。重装甲、高推力、高火力を単純に積み増すのではなく、それらを高次元で統合し、重MSでありながら機動戦の主役となることを目指した機体である。
後に連邦・反連邦勢力の技術体系の中でRMS-099 リック・ディアスとして再構成されるこの機体は、本来、長期化した戦争の中でジオンが生み出したドム系列の正統進化型であった。MS-20 ドムⅢ試作機は、重モビルスーツの時代を終わらせる機体ではなく、重モビルスーツを次世代戦場へ適応させるための試金石だった。


