一年戦争末期、ジオン公国軍は北米大陸における連邦軍の後方指揮能力を麻痺させるため、アメリカ合衆国主要都市への同時降下作戦を強行した。

作戦日はUC0080年1月1日。
停戦交渉が進行し、戦局の趨勢がすでに地球連邦軍優位へ傾く中、ジオン軍上層部の一部は、北米本土への直接攻撃によって連邦政府および軍事中枢に心理的打撃を与え、講和条件を少しでも有利に引き戻すことを狙った。

作戦対象となったのは、ニューヨーク、ワシントンD.C.、ラスベガス、ロサンゼルスの四都市である。

この作戦には、MS-06FZザクⅡ改をベースにした降下作戦仕様機が投入された。大気圏突入後の短時間戦闘、都市部での高機動戦、そして補給を前提としない一撃離脱を目的に、各機には耐熱処理を施した追加装甲、脚部衝撃吸収機構、通信妨害装置、スモークディスチャージャーが追加されていた。

ジオン軍の作戦思想は明確だった。
降下する。
破壊する。
攪乱する。
そして撤収する。
しかし、実際の戦場はジオン軍の想定を大きく上回る苛烈なものとなった。

ニューヨークでは、高層ビル群の間に降下したザクⅡ改部隊が港湾施設および通信インフラへの攻撃を開始した。

だが、連邦軍守備隊は市街地を利用した遅滞戦闘を展開。さらにアメリカ軍残存部隊の対MS火器、戦車部隊、攻撃ヘリ部隊が連携し、ジオン軍の機動力を徐々に削いでいった。

ワシントンD.C.では、ジオン軍は政治中枢への心理的打撃を狙ったが、同地はすでに最重要防衛区域として重層的な防空網と対MS陣地が構築されていた。

降下直後の奇襲には成功したものの、連邦軍のジム系部隊と地上戦力による包囲を受け、投入されたザクⅡ改部隊は短時間で各個撃破されていった。

ラスベガスでは、都市の光、巨大建造物、広い道路網を利用した高速戦闘が発生した。ジオン軍は夜間降下による混乱を利用し、一時的に市街地中心部を制圧しかけたが、砂漠地帯から展開したアメリカ軍装甲部隊と連邦軍MS部隊の挟撃を受け、撤退経路を失った。

ロサンゼルスでは、港湾部と航空施設への攻撃が主目的とされた。ジオン軍は海岸線沿いに降下し、短時間で複数の施設に損害を与えたものの、連邦軍太平洋方面部隊の反応は早かった。

対空砲火、航空戦力、ジム系MSによる追撃によって、降下部隊は内陸への進出を阻まれた。

この作戦において、ジオン軍は各都市に一定の損害を与えることには成功した。連邦軍施設、交通網、港湾設備、通信施設には一時的な混乱が生じ、アメリカ本土にモビルスーツが降下するという事実は、連邦市民に大きな衝撃を与えた。
だが、戦略的には失敗であった。

投入戦力は少数であり、補給線も存在せず、降下後の継戦能力は極めて限定的だった。さらに、連邦軍とアメリカ軍は予想以上に迅速に連携し、市街地防衛、対MS火器、航空支援、装甲部隊を組み合わせた複合防衛戦を展開した。

結果として、ジオン軍降下部隊は各都市で孤立し、撤収不能となった機体から順に撃破されていった。

UC0080年1月1日に実施されたアメリカ合衆国主要都市降下作戦は、ジオン軍にとって最後の大規模な心理戦であり、同時に敗色濃厚な戦局を覆すための無謀な賭けであった。

作戦は連邦軍およびアメリカ軍の抵抗によって失敗。ジオン軍は北米主要都市への直接打撃能力を喪失し、地球圏における組織的反攻能力も事実上失われた。
この戦闘以後、MS-06FZザクⅡ改アメリカ降下作戦仕様は、ジオン軍の執念を象徴する機体であると同時に、一年戦争末期における戦略的限界を示す存在として記録されることとなった。


