YMS-18J プロトタイプ・ケンプファー試作強襲陸戦機は、一年戦争末期、ジオン公国軍が地上戦線の劣勢を覆すために投入した高機動強襲型MSである。
本機は後に知られるMS-18E ケンプファーの前段階にあたる試作機であり、宇宙・コロニー内での短時間高火力強襲を想定した設計思想を、地上戦向けに再構成した機体とされる。

最大の特徴は、軽量化された装甲構造と全身に配置された高出力スラスターである。通常の陸戦型MSのように長時間の制圧戦を行うのではなく、敵防衛線の薄い箇所へ高速接近し、バズーカ、ショットガン、シュツルム・ファウスト、ジャイアント・バズなどの実体弾兵装を短時間で叩き込み、即座に離脱することを目的としていた。地上用に脚部スラスターと姿勢制御系が調整され、低空ホバー移動や短距離跳躍によって、重装甲機では追従できない機動を可能としている。
一方で、試作機ゆえの問題も多かった。装甲は機動性を優先して薄く、被弾に弱い。さらに推進剤と弾薬の消費が激しく、継戦能力は極めて低かった。冷却系も未完成で、砂塵や泥濘の多い地上戦ではスラスターや関節部の整備負担が大きく、運用には熟練整備兵と専用補給車両の随伴が不可欠だった。

本機が投入されたのは、戦争末期の東欧、中央アジア、極東方面などの後退戦である。連邦軍の物量に押されるジオン地上部隊において、MS-18Jは正面から戦線を支える機体ではなく、夜間奇襲、補給拠点襲撃、指揮車両破壊、追撃部隊への逆襲に用いられた。敵部隊からは、突然砂塵や煙幕の中から現れ、火器を撃ち尽くすと消える「緑の突風」として恐れられたという。
しかし、戦局を覆すには投入数があまりに少なかった。生産された機体の多くは補給不足や整備不能により放棄され、一部は後のケンプファー開発データとして回収された。
MS-18Jは、ジオン軍末期の焦燥と技術力が生んだ、極端なまでに攻撃へ振り切った陸戦強襲機である。勝つための機体というより、敗勢の戦場で一瞬だけ局地的な勝利を奪い取るための、使い捨てに近い切り札だった。


