空手やテコンドーなどの打撃格闘競技において、ハイキック=上段蹴りは大きな加点になるだけでなく、当たり方によっては一撃KOも狙える大きな技です。上段の回し蹴り・前蹴り・かかと落とし・回転蹴りなど各種のポイント・コツと撃つタイミングを技と状況別に解説します。
なお、こちらはHayate選手の代名詞でもある左ハイキックのなかでも、典型的なものを編集した動画です。
※本記事は免責同意下での格闘スポーツ競技でのノウハウを解説したものです。他の目的で訪れた方はブラウザの「戻るボタン」で移動してください。
テコンドー主戦績
全日本選手権東日本地区大会3位
全日本選手権東日本地区大会優勝
全日本学生選手権準優勝
全日本選手権準優勝
【Hayate Kamioka選手監修ここから】
ハイキックを撃つ状況
出際・引き際・撃ち合いのパターンがある
格闘技にはハイキック=上段蹴りなどの大技が決まりやすい瞬間・状況がいくつかあり、それを「武道の隙」とも言います。その代表的なタイミングには以下の三つがあります。
①相手が攻撃を出す瞬間
②相手が後ろに下がる瞬間
③打ち合いの最中
①は出際とも言いカウンターを当てるチャンスで、②は引き際とも言い追い撃ちを当てるチャンスになります。また、③は意表をついて奇襲技を当てるチャンスです。
出際にカウンターを当てる
前足のハイキックが決まりやすい
相手が攻撃をしようと間合いを詰めてくる瞬間のタイミングは前足でのハイキック=上段回し蹴りや上段前蹴りを当てるチャンスです。
通常、蹴りは威力を増すために「腰を使って撃つ」のが基本となりますが、この場合は相手が威力=質量・体重を持ってきてくれますので、いかに速く正確に当てるかが重要になります。
カウンターのハイキックの場合、蹴りの基本とは少し離れ、胴体からではなくつま先から初動して素早く当てるのが大切です。もちろん、熟練者の場合、インパクトの瞬間に自然と腰を使って威力を増す動きになります。
また、試合終了間際でこちらがポイントで有利な状況では、時に相手は捨て身で前に出てくる場合があります。
このような状況では、相手はより大きな隙を見せますので、より威力の高い後ろ足のハイキック(回し蹴り・前蹴り)をカウンターで当てるのも一つの選択肢です。もちろん、この場合もスピード重視の蹴りを撃つべきです。
引き際に追撃を当てる
距離が伸びる蹴り方をする
攻防のなかで、相手が後ろに下がる瞬間は追撃を当てるチャンスです。
このような状況では、回し蹴り・前蹴り・かかと落としなどが当たりやすくなります。ただし、相手は下がっているので、蹴りが伸びる撃ち方が必要となります。
蹴りを伸ばすためには上図のような「軸足の返し」が不可欠になります。とくに前蹴りやかかと落としでは難しく練習が必要です。また、回し蹴りの場合は、返した軸足をスライドさせてさらに距離を伸ばすことも可能ですが、かなりの反復訓練が必要となります。
打ち合いの最中に変化蹴りを当てる
おとりを撒いておくのがポイント
打ち合いの最中には、軌道が変化する蹴りや拳撃と見せかけた回転蹴り・外回し蹴りなどが当たりやすくなります。
変化回し蹴りであれば、事前にレバーを何発か蹴っておき、同じ中段軌道から跳ね上がるハイキックが有効です。
また、回転蹴りや外回し蹴りでは、事前に拳撃を何発か撃っておき、同じモーションから撃つハイキックが有効です。
ここまで解説してきた3つの隙に対するハイキックの蹴り方を実際に行ったのが、こちらのハヤテの試合です。
ハイキックの戦術的な使い方
腹部に防御意識を集中させてからのハイキックが有効
ハイキックの戦術的な使い方として非常に有効なのが、試合序盤でミドルキックを多く繰り出し、相手の意識を腹部防御に集中させておいてから、高得点またはKOが狙えるハイキックにつなげる戦術です。
動画は、高校生当時の息子のスパーリングの様子です。とにかく序盤にミドルを集中し、相手のガードが下がった段階でハイキックを決めにいくというのが常套パターンです。
もちろん、蹴る足は相手にとってレバーを狙ってくる足=「左ミドルキック」→「左ハイキック」が主体になりますが、右足の蹴りに関しても相手にはポイント防御の意識もありますので有効です。
ミドルキック軌道から変化するハイキック
上記のミドルキック集中からハイキックを決める場合に、とても有効なのが「ミドルキックの軌道から跳ね上がる変化ハイキック」です。動画は、自宅ジムで実戦的な変化ハイキックの流れを練習しているものです。
距離をとった戦い方の練習として、ミドルキックは回し蹴りではなく横蹴りになっていますが、中段ミドル軌道から膝下が跳ね上がって上段ハイキックに変化している様子がおわかりいただけると思います。
こちらの動画は、ミドルキック軌道からの変化ハイキックをスローで練習している様子です。変化ハイキックのなかでも効き足ではない左変化ハイキックは非常に難易度の高い技ですが、実際の試合で決めるためには、スローで確実に動作ができるくらいになるような反復練習が必須です。
試合での変化左ハイキック
※動画にはKOシーンが含まれます。
最後にご紹介する動画は、息子が高校生のJOC全日本ジュニア選手権に臨むために「変化左ハイキック」および「変化左上段蹴込み」を反復練習する様子と、実際に全日本ジュニア準決勝の試合動画です。
バックスピンハイキック(上段後ろ回し蹴り)のやり方
ハイキックのなかでも、最高難易度の技として知られるのが、バックスピンキック(空手では上段後ろ回し蹴り・テコンドーではティフルギ)ですが、その習得には物理科学的思考に基づいた反復練習が必要です。
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伸びるかかと落としの蹴り方
かかと落としは受け慣れない相手には非常に当たりやすい上段蹴りですが、距離が伸びにくくかわされやすいことですが難点です。
しかし、軸足の運びを工夫すれば、かなり距離を伸ばすことも可能です。
下記の記事では、Hayate選手が使用する「極真空手式」の伸びるかかと落としの蹴り方を解説していきます。
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ハイキックを蹴るための鍛え方
腸腰筋群の英語名称・構造・部位詳細
読みかた:ちょうようきんぐん
英語名称:iliopsoas
部位詳細:腸骨筋|大腰筋|小腰筋
内転筋群の英語名称・構造・部位詳細
読みかた:ないてんきんぐん
英語名称:adductors muscles
部位詳細:大内転筋|長内転筋|短内転筋|薄筋|恥骨筋
股関節柔軟と股関節周辺インナーマッスルを鍛えるのが重要
ハイキックを強く速く蹴るために必要なフィジカルな条件は二つです。
まず、無理なく脚を上げるために股関節の前後・左右・捻り方向全ての柔軟が必要不可欠です。
蹴りの筋肉=大腿部の筋肉と思われがちですが、大腿部の筋肉群は膝関節の屈曲と伸展に作用する筋肉です。蹴るために必要な筋肉は、脚自体を上げる股関節周辺インナーマッスルです。
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戦績:全日本選手権準優勝・全日本学生選手権準優勝・東日本選手権優勝・全日本ジュニア選手権準優勝など
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