空手やテコンドーの大技で、一撃KOも狙える上段後ろ回し蹴り(テコンドーではティフルギ)のやり方のコツ(軸足の返し・タイミング・腕の使い方)を解説します。
幼少からフルコンタクト空手をはじめ、五輪種目テコンドーに転向、小・中・高とジュニア強化指定選手を経て、現在は東日本地区チャンピオンのHayate Kamioka選手の得意技での一つですが、実は小学生・中学生時代は大の苦手技で、試合ではもちろんスパーリングでも成功したことはほとんどありませんでした。
しかしながら、高校生時代に、筆者と試行錯誤・反復練習した結果、ジュニア・一般の全日本選手権という大舞台でも決まるようになってきました。
上段後ろ回し蹴りが苦手な方には必読の内容です。
テコンドー主戦績
全日本選手権東日本地区大会3位
全日本選手権東日本地区大会優勝
全日本学生選手権準優勝
全日本選手権準優勝
【Hayate Kamioka選手監修ここから】
まずは、こちらの動画をご覧ください。2016年Hayate選手が出場したJOCジュニア全日本選手権の準々決勝と準決勝という、相手の錬度も高く、非常に技が決まりにくい状況で決めた2種類の上段後ろ回し蹴り(先制タイプとカウンター)です。
この状況で、上段後ろ回し蹴りが撃て、さらに決まるようになったのは、何年もかけた反復練習の積み重ねの成果です。
上段後ろ回し蹴りのやり方
軸足の動作と返しが重要
軸足をやや内股気味に構える
上段後ろ回し蹴りを撃つためには、軸足(図では右足)の構え・運び・返しが非常に重要です。
まず構え(図左)ですが、軸足は通常のやや外股気味の構えと違い、やや内股気味に構えます。これは、軸足の回転動作を少しでも素早くするためです。
しかし、上級者になると、この軸足の微妙な角度を見て、上段後ろ回し蹴りがくることを予測してしまうので、相手の錬度に応じて調整することが必要です。
つまり、初心者や中級者相手ならば、軸足を内股気味に構えていても、相手はほとんど気づくことはありませんが、上級者相手になると見破られてしまいます。
軸足を斜め前に横向きに運ぶ
次に軸足の運び(図中)ですが、上段後ろ回し蹴りが当らない最大の要因が「距離が足らない」ことです。
上段後ろ回し蹴りはモーションの大きな蹴りなので、撃ち始めると相手は必ず気づきます。そして、後方に下がるまたは上体を反らすなどの回避動作を行います。
もし、上段後ろ回し蹴りを軸足を運ばずに、その場で撃ち始めたならば、十中八九、相手に下がられてかわされます。ですので、軸足を斜め前に繰り出し、「気づいても逃げ切れない近距離」から撃ち始めることが大事です。
なお、運んだ軸足は相手に対して横向きになる程度に置き、続く回転動作がスムーズに行えるようにします。
腕→頭→肩→足の順に返していく
上段後ろ回し蹴りの動作のなかでも、もっとも難易度が高いのが回転=返しの動作です。この動画は、まだ上段後ろ回し蹴りが苦手だったHayate選手の中学生時代の練習の様子です。
返しの動作を会得するために、あえてオーバーな動作で反復練習を行っています。
この動画では、右が蹴り足、左が軸足ですが、まず右腕を大きく後方に振り回転動作の初動を作ります。
そして、回転が始まったらターゲッティングのためにまずは頭を前に向け、その後、左肩を前方に捻って回転力を加速します。
この時点で、軸足はまだ相手に対して横向きのままで、十分に回転速度と体幹の捻りがたまった時点で、一気に軸足を返して蹴り足も開放します。
なお、この時点ではまだ未完成なので、初動から蹴り足が伸びていますが、相手に見えづらく当てやすくするためには、ギリギリまで蹴り足の膝はたたんでおく必要があります。
反復練習をしたら実戦練習で感覚を養う
下がる相手に対する距離感を体感して会得していく
サンドバッグやキックミットに対して、上段後ろ回し蹴りが綺麗に撃てるようになったら、スパーリングなどの実戦練習で距離感を養っていきます。
上段後ろ回し蹴りには、自分が攻める先制タイプとカウンタータイプの撃ち方がありあますが、いずれにせよ相手は必ず下がります。
ここが、サンドバッグとの最大の差異で、下がる相手に対して当る距離感・踏み込みの加減を対人練習で覚えていきます。
動画は、Hayate選手も高校生になり、いよいよ実戦(試合)を見据えて対人相手の練習を始め、ずいぶん距離感をつかめてきた頃のものです。
スロー再生に編集しましたので、初動、軸足の運びと返し、折りたたんだ蹴り足の開放などをご参照ください。
テコンドー至高の一撃・ティフルギ
2004年アテネ五輪の伝説の一撃
最後に、テコンドー至高の技とも呼ばれるティフルギ(空手では飛び上段後ろ回し蹴り)のなかでも、伝説的なKOキックとなった、2004年アテネ五輪での一撃をご紹介します。
【Hayate Kamioka選手監修ここまで】
戦績:全日本選手権準優勝・全日本学生選手権準優勝・東日本選手権優勝・全日本ジュニア選手権準優勝など
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