スロートレーニングの基本理論と、自宅でも実施できる具体的な腕立て伏せ・腹筋・スクワットのやり方を解説します。
スロートレーニングとは
スロートレーニングとは、筋繊維の緊張を保ったまま動作するレジスタンス運動(筋力トレーニング)のことで、低負荷でもゆっくりと動作を行うことで筋肥大や筋力向上が期待できるトレーニング方法です。
通常の筋肥大トレーニングは高重量を筋肉にかけることが必要なのに対し、スロートレーニングは関節や靭帯に対するリスクも少なく、特に女性や初心者に有効とされています。
スロートレーニングとは、筋肉の発揮張力を維持しながらゆっくりと動作するレジスタンス運動のひとつの方法です。比較的軽めの負荷であっても、ゆっくりと動作することで大きな筋肥大・筋力増強効果を得ることができます。関節や筋肉にかかる負荷が小さいことから、安全に行える効果的なレジスタンス運動として期待されています。
スロートレーニングの負荷回数設定
筋力トレーニングの対象となる骨格筋は、筋繊維が束状になって構成されていますが、その筋繊維には大きく「遅筋」と「速筋」があり、速筋は「速筋繊維Ⅱa」と「速筋繊維Ⅱb」に分けられます。それぞれの特性と筋力トレーニングでの負荷設定は以下の通りです。
遅筋(遅筋繊維Ⅰ)
持久的な運動において持続的な遅い収縮(Slow)をし、酸素(Oxygen)を消費することからSO筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えてもほとんど筋肥大しません。陸上競技で例えるなら、長距離走に必要な筋肉です。
速筋(速筋繊維Ⅱa)
持久要素のある瞬発的な動作において速い収縮(Fast)をし、酸素(Oxygen)を消費することからFO筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えると筋肥大します。陸上競技で例えるなら、400~800m走に必要な筋肉です。
速筋(速筋繊維Ⅱb)
瞬発的な運動において爆発的な速い収縮(Fast)をし、グリコーゲン(Glycogen)を消費することからFG筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えると強く筋肥大します。陸上競技で例えるなら、100~200m走に必要な筋肉です。
スロートレーニングは最大重量の50%で行う
一般的な筋力トレーニングで筋肥大・筋力向上を狙う場合、そのターゲットである速筋繊維Ⅱaおよび2bに適切な負荷回数設定は最大重量の70~60%とされています。この設定の場合、6~12回の反復回数で動作限界がきます。
スロートレーニングの場合は、同じく速筋繊維Ⅱaおよび2bをターゲットにする場合、最大重量の50%で行うのが妥当で、低負荷でも動作速度がゆっくりなため、やはり6~12回の反復回数で動作限界がきます。
レジスタンス運動で通常大きな筋肥大・筋力増強効果を得るためには、1回あげることができる最大の重量(1RM)の65%程度以上の負荷重量(65%1RM)が必要とされています。ですから自分の体重を使って行う腕立て伏せのような運動では大きな効果を得るのが難しいとされてきました。しかしスロートレーニングでは、トレーニングの動作の仕方を工夫することで、もっと軽い負荷でも効果的に筋力を増強させることが可能となります。50%1RMの負荷で行ったスロートレーニングでは80%1RMの負荷を用いて通常の速度で行ったトレーニングと同等の筋肥大・筋力増強効果があったという報告があります。
スロートレーニングの動作方法
ゆっくりとした動作で筋繊維の緊張を発生させる
スロートレーニングの動作方法で、まず重要となるのが「ゆっくりとした動作」で「筋繊維の緊張を保つ」ことです。これは、ウエイトを上げるときの短縮性収縮(コンセントリック収縮)、ウエイトを下げるときの伸張性収縮(エキセントリック収縮)の両方で重要です。
具体的には、3~5秒かけてゆっくりとウエイトを上げ、同じく3~5秒をかけてゆっくりとウエイトを下ろしていきます。
関節を伸ばしきって途中休憩を入れない
スロートレーニングの実践でもうひとつ大事な動作ポイントが、「ノンロック」と呼ばれるもので、関節を伸ばしきって休憩動作を入れない方法です。
腕立て伏せのスロートレーニング
腕立て伏せのスロートレーニングでは、筋繊維の緊張を維持するために、腕を伸ばしきらずに動作を行うことがポイントです。具体的には、ゆっくりと身体を下ろし、ゆっくりと身体を押し上げ、肘を伸ばしきらずに再び身体を下ろしていきます。
腹筋のスロートレーニング
腹筋のスロートレーニングでは、筋繊維の緊張を維持するために、上半身を床につけずに動作を行います。具体的には、ゆっくりと上半身を持ち上げ、ゆっくりと上半身を下ろしていき、上半身を床につけずに再び上半身を持ち上げていきます。
スクワットのスロートレーニング
スクワットのスロートレーニングでは、筋繊維の緊張を維持するために、膝を伸ばしきらずに動作を行います。具体的には、ゆっくりと腰を下ろしていき、ゆっくりと立ち上がり、膝を伸ばしきらずに再び腰を下ろしていきます。