アームレスリングでよく言われることに「背中で引く」「背中で固める」というのがありますが、具体的に背中の使い方と必要な筋肉部位のトレーニング方法について解説します。
アームレスリングに重要な背中の筋肉
広背筋
上半身で最大の筋肉、全身でも大腿四頭筋についで大きな筋肉が、背中の筋肉の一つである広背筋(こうはいきん|latissimus dorsi muscle)です。
広背筋は体幹(脊椎骨と肩甲骨)から起始し、上腕骨に停止しており、肩関節において下記のような作用を持っています。
肩関節の内転:脇を閉じる
肩関節の伸展:腕を引く
肩関節の内旋:腕を内側に捻る
これらは、いずれも腕相撲・アームレスリングにおいて実戦に即した動作であり、この筋肉が重要である理由です。
大円筋
広背筋の下層に位置する大円筋も肩関節の動きに重要な役割を持つ筋肉で、肩甲骨から起始して上腕骨に停止しており、広背筋と同様に肩関節の内転・伸展・内旋の作用を持っています。
アームレスリングにおける背中の使い方
上腕骨を固定するのに筋力を使う
アームレスリングの基本は、腕を固定する=肩関節と肘関節の角度を変えずに筋力で固めたままの状態で相手を倒すことです。
ですので、一般的な背中を使うイメージ、つまり腕を引いたり閉じたりして肩関節を動かす短縮性収縮(コンセントリック収縮)は実際の試合では使いません。
上腕骨を体幹に固定して動かさない使い方=等尺性収縮(アイソメトリック収縮)を行います。
一般的に等尺性収縮(アイソメトリック収縮)が最大筋力を発揮するのは、その筋肉の最大伸展と最大収縮の中間位置です。
このため、アームレスリングにおいて背中を使う場合は、広背筋・大円筋の最大伸展(肩甲骨を開放した状態)と最大収縮(肩甲骨を寄せきった状態)のちょうど中間位置で筋肉に力を入れて上腕を固定します。
これは、肘関節にも言えることで、最大伸展と最大収縮の中間地点=肘の角度が90度のポジションがもっともアームレスリングで力を発揮します。
アームレスリング向きの背中の鍛え方
懸垂
懸垂(チンニング)は主に、広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋に負荷がかかり、腕相撲トレーニングの基本とも言える最重要種目です。
懸垂(チンニング)のやり方の手順
①肩幅よりも広くバーをグリップして構える
②肩甲骨を寄せながら、胸をバーにつけにいくフォームで身体を引き上げる
③身体を引き上げたら、肩甲骨を寄せきり、背筋群を完全収縮させる
④ある程度筋力でコントロールして身体を下ろす
フォームのポイント
本種目は、肩甲骨を寄せて背筋群を完全収縮させることが大切で、そのためには「バーより上に顎を出す」のではなく、「バーに胸をつけにいく」イメージで身体を引き上げます。
また、顎を引くと背中が丸まり背筋群が完全収縮しにくくなるので、やや顎を上げる意識で行ってください。
パラレル懸垂
パラレル懸垂は手の平が向き合うようにグリップして行う懸垂バリエーションで、背中の中央ラインに負荷がかかります。
パラレル懸垂のやり方の手順
①手の平が向き合うようにグリップし構える
②肩甲骨を寄せながら身体を引き上げていく
③身体を引き上げたら、肩甲骨を寄せきるとともに、やや顎を上げて背筋群を完全収縮させる
逆手懸垂
逆手懸垂はリバースグリップで行う懸垂バリエーションで、僧帽筋と上腕二頭筋に負荷が強くかかります。なお、上腕二頭筋をメインターゲットとして本種目を行う場合は、あえて背中を丸め気味にし、できるだけ背筋群を使わずに負荷を上腕二頭筋に集中させるやり方もあります。
逆手懸垂のやり方の手順
①逆手でバーをグリップして構える
②肩甲骨を寄せながら身体を引き上げていく
③身体を引き上げたら、肩甲骨を寄せきるとともに、やや顎を上げて背筋群を完全収縮させる
ダンベルローイング
ダンベルローイングは主に、広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋に負荷がかかり、アームレスリングに重要なダンベルトレーニング種目です。
ダンベルローイングのやり方の手順
①片手をベンチにつき、片手でダンベルを保持し、前傾姿勢を作って構える
②肩甲骨を寄せながらダンベルを引いていき、引ききったポジションで肩甲骨を寄せきって背筋群を完全に収縮させる
③ゆっくりと効かせながら元の体勢に戻る
フォームのポイント
本種目は、肩甲骨を寄せながら腕を引き、引ききったポジションで肩甲骨を寄せきることが大切です。肩甲骨を寄せずに動作を行うと、負荷が上腕二頭にばかりかかってしまうので注意してください。
ダンベルベントオーバーローイング
両手にダンベルを保持し、中腰前傾姿勢のニーベントスタイルで行うバリエーションで、脊柱起立筋も鍛えることができます。
ダンベルベンチロー
ベンチにうつ伏せになって行うバリエーションで、腰に不安のある人に適しています。