腕相撲に勝つための握り方を、アームレスリング競技の吊り手(トップロール)と噛み手(フック)ごとに具体的な指の使い方も含めて解説します。また、後半では腕相撲が強くなるために必要な筋トレ方法と器具についてもご紹介します。
アームレスリング競技において、握りは非常に重要な要素で勝敗を大きく分ける部分です。その技術を腕相撲に用いれば、非常に有利に勝負を運ぶことができます。
腕相撲・アームレスリングの二つの技
トップロールとフックとがある
腕相撲やアームレスリングには、てこの原理で相手の指先を吊り上げて倒すトップロールと、自分が有利な位置に手首を巻き込んで倒すフックとがあります。
この二つの技で、必要となる筋肉部位が一部異なってきますので、まずはその技の特性を知ることが重要です。
吊り手(トップロール)という技のコツと握り方
こちらは、全日本マスターズ80kg超級の本選決勝での筆者で、トップロールがきれいに決まり勝利した時の写真です。まずは、このトップロール=吊り手という技がどのようなテクニックなのかを解説していきます。
てこの原理で相手の指先を吊り上げる
トップロールは、大きく二つの動きから構成される技で、まずはスタート直後に肘を支点にして自身の身体(力点)を後方に倒し、そのてこの力で相手の指先(作用点)を上方かつ後方に吊り上げます。この動きが、トップロールの「トップ」の部分です。
こちらが、てこの原理で相手の指先を上方・後方に吊り上げた状態です。この状態に入りやすくするためには、はじめの握りで重要なポイントがあります。
こちらは、いわゆる素人腕相撲の様子ですが、トップロールに必要不可欠な肝心な部分が間違っています。
こちらは、トップロールの握りをした筆者ですが、素人とアームレスラーの握りの大きな違いがわかるでしょうか?
答は、人差し指を親指にかける(アームレスラー)と親指を出して握る(素人)です。
アームレスリングのなかでも、特にトップロールは「相手の親指をコントロールして倒す技」と言い換えることができます。ですので、勝負の間は常に相手の親指を挟みつけています(ピンチする)。
実際に、親指と人差し指で輪っかを作ってみてください。人差し指で親指を押させえるのと、親指で人差し指を押さえるのとでは、どちらがピンチする力が強いですか?
当然、前者=人差し指で親指を押さえる握り方ですね。
ちなみに、後述する噛み手(フック)でもこのような握り方をすることが少なくありませんが、トップロールほど絶対的な要素ではありません。
続いて、この輪っかを作るときのポイントです。上図のように、トップロールでは相手の指先を狙って引き伸ばしていきますが、この時に相手の指先が自身の手の甲に深く入っていると、初動で押さえ込まれてしまって上手く技が決まりません。
当然、フックの選手は指先を吊り上げられないように、できるだけ深く、相手の手の甲まで握りこもうとします。
これを避けるための握り方がこちらのものです。人差し指で親指を押さえるときに、ただ押さえるのではなく親指を内側にねじ込むように輪っかを作ります。
実際にやっていただければわかりますが、握りに厚み・丸みが出て、手の甲までの距離が長くなり、相手が深く握りにくくなります。
中指を支点にてこの原理で相手の手をひっくり返す
こちらは、トップロールの動きをスローで行った動画です。まずはてこの原理で相手の指先を後方に伸ばし、その後、手首から先を返して(ロール)させて相手の手の平を完全にひっくり返しています。
実は、この最後のとどめ=ロールでもう一度「てこの力」を使います。序盤の「トップ」を腕全体を使った大きなてこだとすれば、最後の「ロール」は手の平で行う小さなてこです。
当然、てこの力なので支点が存在しますが、それは中指の先端です。
親指と人差し指で相手の親指を捕まえておき、中指を中心にして「小さなてこ」でひっくり返すのです。なお、この「小さなてこ」を使うためには、自分の手首(リスト)が入った(曲がった)状態で、なおかつ相手のリストが伸びた状態が必要です。
後方への吊り上げが決まったら、慌てず相手の指と手首を伸ばしてからロールをかけてください。ロールを焦って中途半端な状態になると、相手に手首を巻き込まれ(フックされ)大逆転されてしまいます。
噛み手(フック)という技のコツと握り方
力任せに手首を巻き込むのではなく自分だけ上に巻き込む
最初の写真をアップにしたものがこちらの画像ですが、向かって左の選手のフックがきれいに決まっています。
噛み手(フック)はパワー技とされ、「力任せに手首を巻き込む」と誤解されがちですが、実際はそんなことは全くありません。
そもそも、力任せに手首を巻き込んだだけだと、全くの五分五分です。それでは、技でも何でもありませんよね。
写真を見てください。一見、お互い同等に手首を巻き合っているように見えますが、自分に有利なようにフックしているのは、あくまでむかって左の選手です。
手の高さ(指先の高さ)を見てください。明らかに左の選手が指を上にしています。基本的に、アームレスリング・腕相撲では手が相手より下になったら力が入らず非常に不利です。右の選手は、すでにまともに力が入れられる状態ではありません。
フックは、二段階の技で、一度このように相手を「捕まえ」そして、そこから相手の親指を倒していきます。
できるだけ深く指先を握るまたは滑り込ませる
フックは、一度相手を捕まえる必要がありますが、具体的にどこを捕まえるかと言えば「相手の手の甲」です。このため、握るときにはできるだけ深く、相手の手の甲まで握りこむ必要があり、時には親指から人差し指を外し、ピンチ力を犠牲にしても指先を深く入れます。
また、相手の手が大きく、手の甲まで握りこめないときは、あえて指先の力を抜いておき、スタートと同時に手首をストロークしながら指先を奥まで滑り込ませていくテクニックもあります。
イメージとしては、ややすくい上げるような軌道で手首をストロークしフックしていきます。
真横に親指をねじ込んで倒していく
こちらは、筆者のジムで練習していたアームレスリング選手が、U21(21歳以下)の全日本選手権で優勝したときの動画です。
一度捕まえて(フックして)、その後で真横に親指をねじ込むような軌道で相手の親指を倒していく様子がおわかりいただけると思います。
最初に解説した、指の「上下の概念」がわかりにくくなるかもしれませんが、相手の上をとるのは「捕まえる瞬間」であり、捕まえたら自分の親指が上に他の指先が下になるような回転で相手の親指を捻っていきます。
なお、この時に薬指と小指の握り方が甘いと、そこから相手が手首をロールさせ、大逆転のトップロールが決まってしまいますので、噛み手(フック)においては薬指と小指の握りは、トップロール以上に重要です。
技は無限に変化し個人特性が強い
なお、今回解説したトップロールとフックの技術論は、あくまでも一般的なものであり、技の軌道や特性は選手一人一人で大きく異なります。
腕相撲・アームレスリングで勝つためのコツ・握り方は、あくまで無限に変化するものであり、今回解説した限りではないことをつけ加えておきます。
こちらは、典型的なトップロールの動画です。
こちらは、典型的なフックの動画です。