一般的に「腕が長いほうが腕相撲(アームレスリング)に有利」と言われますが、実際には一長一短であり、トップロール(吊り手)とフック(噛み手)では全く話が違ってきます。
まずは、腕相撲(アームレスリング)の二つの技であるトップロール(吊り手)とフック(噛み手)をご紹介します。
トップロール(吊り手)の特長
テコの原理で相手の指先を吊り上げる
こちらが、典型的なトップロール(吊り手)の勝ち方で、肘を支点にして作用点(手)を大きく後ろに引き上げることにより、相手の指先を吊り上げ、力の入らない状態にしてからロールして倒します。
フック(噛み手)の特長
相手の手首を下敷きにする
一方、こちらが典型的なフック(噛み手)の勝ち方で、スタートと同時に自分の手を滑り込ませるように深く巻き込み、自分が上で相手が下という圧倒的に有利なポジションをとり、そのまま力で横にねじ伏せます。
腕が長いとトップロールの初動には有利
てこの原理で相手の指先を吊り上げる
トップロールは、大きく二つの動きから構成される技で、まずはスタート直後に肘を支点にして自身の身体(力点)を後方に倒し、そのてこの力で相手の指先(作用点)を上方かつ後方に吊り上げます。この動きが、トップロールの「トップ」の部分です。
こちらが、てこの原理で相手の指先を上方・後方に吊り上げた状態です。この状態に入りやすくするためには、はじめの握りで重要なポイントがあります。
このように、腕相撲(アームレスリング)のトップロール(吊り手)はてこの原理を使った技ですので、腕の長さ(前腕の長さ)が長いほうが、作用点にかかる力が距離に正比例して増幅しますので、「腕が長いと吊り手系の腕相撲では有利」と言えます。
ただし、それは初動(スタート時)の優位性であり、技が決まらずにフック(噛み手)を決められると、その前腕の長さに正比例して攻撃を受ける力が増幅しますので、全ての状況において「腕が長いと腕相撲に有利」というわけではありません。
腕が短いと肘の角度を狭く維持できて有利
また、公式にスポーツ化された腕相撲=アームレスリングでは、両者から等しい距離に拳がくるように組むことがルール化されています。
このため、腕の長い選手と短い選手が組んだ場合、どうしても腕の長い選手は肘の角度を浅くする必要があり、腕の短い選手は肘の角度を閉じて構えられますので、特にフック系の技を使う場合はかなり有利になります。
腕の長さと最適な技の組み合わせ
腕の長さと腕相撲(アームレスリング)の技には、ある程度の相関関係がありますが、それをまとめると以下のようになります。
〇腕の長い人:トップロール(吊り手)を使うと有利
〇腕の短い人:フック(噛み手)を使うと有利
なお、これはあくまで一般論であり、日本トップクラスの選手の中には、腕が短いけれどもトップロールが得意な選手、腕が長いけれどもフックが得意な選手もいます。