伊勢志摩地方の特産品として、ひそかに人気を集めているのが「きんこ芋」=「隼人芋(別名にんじんいも)の干し芋」です。
本記事では、きんこ芋が買える場所(ネットおよび実売店舗)をご紹介するとともに、さまざまなきんこ芋に関する情報をご紹介します。
※きんこ芋は当サイト運営事業所「FutamiTC」が所在する三重県伊勢志摩地方の特産品ですので、実際の取材(きんこ芋工房上田商店灯台カフェの食レポ)などもまじえて記載しています。
きんこ芋とはどんな食べ物?
志摩の郷土食として親しまれている「きんこ」は、サツマイモの一種である隼人芋を使用した干し芋です。隼人芋は、志摩の痩せた土地との相性が良く、海辺の畑でも良く育ち、重要な作物として昔から作られてきました。きんこの名前の由来は、干したナマコ(きんこ)に形が似ていたためと言われています。
志摩では、昔から冬になると、一般家庭でもきんこ作りが行われ、海女さんや子どものおやつとして親しまれてきました。
きんこは、カロテンを多く含む特徴のほか、アルカリ性の食品であることなどから、漁師のスタミナ食としても重宝されてきました。素朴であっさりとした甘味と、もっちりとやわらかい食感、艶やかなべっこう色をした逸品です。引用および画像参照:志摩市公式ホームページ「志摩の『きんこ』」
きんこ(英語:
kinko)は、日本の乾物。三重県の志摩地方に伝わる郷土料理で、サツマイモの一種である隼人芋を用いた干し芋である。海女や子供の間食や、漁師のスタミナ源としても活用された。そのまま食べるだけでなく、炙って食べることもある。12月中旬から1月末までが旬とされる。
上記の公的機関(志摩市ホームページ)やWikipediaの記載にあるように、きんこ芋とはサツマイモのなかでも隼人芋(にんじんいも)と呼ばれるオレンジ色の強い品種(鹿児島県原産でアメリカ品種のポートリコに類似した品種)を用いて作られる干し芋のことです。
きんこ芋は三重県伊勢志摩地域の特産品として知られていますが、特に志摩市越賀で昔から盛んに作られている伝統食品でもあります。
普通の干し芋ときんこ芋の違い
きんこ芋は干し芋の一種ですが、一般的な干し芋と製法が大きく異なる部分があります。
それは、一般的な干し芋が「蒸した芋を乾燥させる」のに対し、きんこ芋は「煮た芋を乾燥させる」という違いです。蒸すよりも煮たほうが芋の中心まで十分に加熱され、その結果、きんこ芋独特のもっちりねっとりとしたまるで和菓子のような食感・風味になるのです。
なお、このような製法を「煮切り干し製法」と呼びますが、きんこ芋の製法にはさらに二つの方式があります。
きんこ芋とぎんこ芋の違い
ネット検索などで「きんこ芋」を調べていると「ぎんこ芋」と呼ばれる干し芋もあることに気づくのではないでしょうか。
実は、このぎんこ芋はきんこ芋ブランドで有名な上田商店のオリジナル商品で、隼人芋のかわりに甘みの強いサツマイモ品種である「べにはるか」を原材料としています。
ただし、「一般的なべにはるかの干し芋」ではなく、先述の煮切り干し製法によって作られた「独自製法のべにはるかの干し芋」になります。
きんこ芋の作り方
きんこ芋には大きく2種類の製造方法があり、それは「JA方式」と「越賀方式」です。それぞれの製造工程は以下の通りです。
JA方式
①材料選別
②水洗い
③皮むき
④アクぬき
⑤煮る
⑥蒸らし(60分以上)
⑦切断(冷却後)
⑧セイロ並べ
⑨乾燥
⑩梱包
越賀方式
①材料選別
②水洗い
③煮る(皮つきのまま)
④蒸らし(30分程度)
⑤皮むき
⑥切断
⑦セイロ並べ
⑧乾燥
⑨成型
⑩梱包
JA方式は先に皮をむくのに対し、伝統的な越賀方式では皮付きのまま煮るという大きな違いがあります。
このほかに、アク抜き工程の有無や蒸らし時間の違いなどもあります。
きんこ芋(干し芋)のカロリーと栄養成分
きんこ芋100gあたりのカロリー・栄養素は以下の通りです。
エネルギー:303kcal
タンパク質:3.1g
脂質:0.6g
炭水化物:71.9g
食物繊維:5.9g
ビタミンE:1.3mg
ビタミンB1:0.19mg
ビタミンB2:0.08mg
ナイアシン:1.6mg
ビタミンB6:0.41mg
葉酸:13μg
パントテン酸:1.35mg
ビタミンC:9mg
ナトリウム:18mg
カリウム:980mg
カルシウム:53mg
マグネシウム:45mg
リン:93mg
鉄:2.1mg
亜鉛:0.5mg
銅:0.3mg
マンガン:0.4mg
なお、数値は「食品成分データベース(文部科学省)」を参照しています。
きんこ芋はどこで買える?
実店舗販売
実店舗販売のお店として有名なのが、志摩市安乗岬灯台のふもとにある「きんこ芋工房・上田商店」です。
同店舗では、加工梱包されたきんこ芋が購入できるのはもちろん、きんこ芋を使ったオリジナルの「きんこ芋パフェ」などのスイーツを堪能できます。
また、お正月期間限定ではありますが、鳥羽市立海の博物館のミュージアムショップでもきんこ芋の販売が行われてます。
今年も「きんこ(干し芋)」の季節がやってきました。当館に入荷するのは12月31日の大晦日、鳥羽市国崎町の海女さんが作った美味しい「きんこ」です!大みそかから販売します♪ #きんこ #海女 #冬の風物詩 pic.twitter.com/R1YINWpyUK
? 海の博物館Toba Sea-Folk Museum (@umi_museum) December 16, 2017
ネット通販等
きんこ芋は楽天市場およびヤフーショッピングの「伊勢鳥羽島特産市場」で購入可能です。
また、「上田商店」ブランドのものは
①婦人画報のお取り寄せ
②JR東海いいもの探訪
③おとなの週末お取り寄せ倶楽部
④ギフトANNY
⑤志摩市ふるさと納税
で購入可能となっています。
このなかで、①婦人画報と④ギフトANNYではきんこ芋そのものではなく「ほし芋プレミアムムースプリン」のみの取り扱いとなっています。
このほか、「海女さんの店」ブランドのものは楽天市場・Amazon・ヤフーショッピングそれぞれの「伊勢鳥羽志摩特産横丁」販売ページからも購入可能です。
これらネット通販での購入先は下記のページに一覧でまとめてあります。
実際に楽天できんこ芋を購入してみた
前述のリンク先でもご紹介している、楽天市場の「伊勢鳥羽志摩特産横丁」ショップで実際にきんこ芋を注文してみました。
注文から5日後にA4封筒に入れられたヤマト運輸メール便(ネコポス)でちゃんと届きました。
購入したきんこ芋は、実食レビューやアレンジレシピに活用していきます。
きんこ芋作りに挑戦
きんこ芋があまりに美味しいので、家庭での手作りにも挑戦しました。
まずは、材料の隼人芋(にんじんいも)を楽天市場で購入しました。3kgパックでもこの量ですので、きんこ芋だけでなく「ニンジン芋料理」もあれこれと試せそうです。
今回のきんこ芋作りは、より伝統的な「越賀方式」で行いました。
まずは、隼人芋をきれいに水洗いし、鍋にセットします。
ここから、煮ていきますが、時間は約30分(芋の大きさによって異なる)で、目安はつまようじが芯までスッと通る軟らかさになるまで煮ることです。
煮あがった隼人芋は、すぐに冷まさずにこのまま蓋をして蒸らしながらゆっくりと常温になるまで放置します。
このように、蒸らすことで甘みが増しますので、きんこ芋作りの過程では「蒸らし」は非常に重要とのことです。
蒸らしが終わり、常温まで冷めた状態です。ここから皮を剥いていきますが、手で剥かずに包丁を使うときれいに仕上がります。
皮を剥いた状態です。隼人芋の特徴であるオレンジ色が鮮やかですね。このまま食べても美味しいです。
皮を剥いた隼人芋は、厚さ約1cmに切り分けます。旨味が損なわれるので輪切り方向ではなく、繊維に沿って縦方向に切ります。
切り終わったきんこ芋を干し物ネットに並べます。切った芋同士がくっつかないよう、余裕を持って(間隔をあけて)並べるのが上手に干すコツです。
後は、風通しの良い半日陰で2~3日干したら出来上がりです。雨の日は室内に入れてください。
干すこと3日、出来上がりました。
出来上がったきんこ芋は、乾燥が進まないよう、密閉パックに入れて保管します。
自作きんこ芋の芋ようかん
自作したきんこ芋を使って芋入り羊羹を作りました。既製品を買うとかなり高価ですが、自作きんこ芋だと気兼ねなくふんだんに使うことができます。
水300mlに刻んだきんこ芋と粒あんを入れ、寒天4gも加えてよく攪拌します。
焦がさないように気をつけながら、しっかりと均一になるようにかき混ぜます。
器に移し、粗熱をとってから冷蔵庫で冷やします。
出来上がりました。きんこ芋のもっちり感が良いアクセントになります。
きんこ芋工房上田商店灯台カフェを訪れる
安乗埼灯台のすぐそばの絶景ローケーション
きんこ芋工房上田商店灯台カフェは、当サイト運営事業所「FutamiTC|伊勢市」から車で1時間ほどの距離にある地元ですので、実際に訪れてランチとスイーツを楽しんできました。
立地は安乗埼灯台の公園内で、駐車場は同灯台の無料駐車場(20台ほど)が利用できますので、とてもアクセスが良好です。
建物は灯台と同じく白を基調としたモダンなデザインで、若い人の感性にも十分応えられるものだと感じました。
カフェの入り口にはメニュー看板があり、その日にいただけるメニューが入店前に確認できます。実際に訪れた日の主なメニューは以下の通りでした。
さつまいもごはんの自家製カレープレート:1390円
きんこ芋プレミアムパフェ:1290円
ほし芋プレミアムムースプリン:690円
芋蜜のムースプリン:440円
芋蜜がけソフト:650円
芋蜜のロールケーキ:640円
芋ぜんざい:790円
ホットコーヒー:500円
アイスコーヒー:550円
さつまいもラテ:600円
店内の様子
店内は、レジカウンター・スイーツのショーケース・お土産コーナー(きんこ芋実売)・飲食ブースなどから構成されており、もちろんトイレもあります。
印象的だったのは、大きな窓から安乗埼灯台と太平洋が一望できる飲食ブースで、まさに絶景のパノラマロケーションです。
テレビ番組とコラボしたカレープレート
安乗埼周辺には、旅館・民宿は多くありますが、ランチスポットがほとんどありません。ですので、同カフェにランチメニューがあるのは観光客にはうれしいポイントです。
提供されているランチメニュー「さつまいもごはんのカレープレート」で、きんこ芋の材料である隼人芋(にんじんいも)が使われた芋ご飯・キーマカレー・サラダのコンビネーションプレートになっています。
このカレープレートは、テレビ番組のコラボ企画としてスタートしたもので、一流ホテルのシェフが監修している本格派カレーです。
カレーの辛さと芋の甘さが抜群の組み合わせです。
きんこ芋スイーツの王様
きんこ芋工房上田商店灯台カフェを訪れたなら、外せない定番・王様メニューがプレミアムパフェとプレミアムムースプリンの2品です。
今回は、海が一望できる窓際の特等席でいただきました。
どちらも、きんこ芋の美味しさが凝縮された絶品スイーツでした。
きんこ芋スイーツのお土産
上田商店灯台カフェのお土産コーナーでは、日持ちのする「きんこ芋加工スイーツ」を買うことができます。
それは、先にレポートしたきんこ芋プレミアムパフェにもトッピングされていた、「干し芋チップス」と「干し芋もなか」で、いずれもお土産物として高い人気があります。
蜜芋のロールケーキを購入
今回の取材では、実際にお持ち帰りスイーツの「蜜芋のロールケーキ」を購入して試食しました。
きんこ芋は、クリーム系の洋風スイーツにもしっかりとマッチして、とても美味しかったです。
隼人芋(にんじんいも)の販売
上田商店灯台カフェで販売しているのは、きんこ芋・きんこ芋スイーツだけではありません。なんと、直営農場で栽培された、きんこ芋の原材料「隼人芋|にんじんいも」そのものを買うこともできます。
こちらは、焼き芋などにしてご家庭でも簡単に味わえます。なお、隼人芋の焼き芋の作り方は下記のように解説されています。
水洗いしたお芋をアルミホイルに包んで焼いてください。オーブントースターなら30分ほどでしっとりやき芋になります。時間はかかりますがフライパンでも焼けます。
なお、隼人芋(にんじんいも)の具体的なレシピ例は記事後半でご紹介しています。
きんこ芋のアレンジレシピ
きんこ芋羊羹
材料:きんこ芋1個・粒あん350g・寒天4g・水200cc・砂糖50~150g
用意した材料を鍋に入れます。砂糖の量は好みで調節してください。
焦げ付かないように、加熱しながら材料を均一になるまで混ぜていきます。
十分に材料が混ざったら、器に入れて粗熱をとり、後は冷蔵庫で冷すだけです。
綺麗に固まりました。器から取り出して食べやすい大きさに切ります。
できあがりました。さっぱりめの羊羹にきんこ芋のねっちり感がアクセントになり、とても美味しくいただきました。
きんこ芋プリン
材料は、市販のプリンの素・刻んだきんこ芋・牛乳(350ccです。
材料を手鍋に入れ、焦がさないように気をつけながらかき混ぜ、温めます。
加熱が終わったら、器に入れて粗熱をとり、冷蔵庫で冷やします。
出来上がりました。ぷるんとしたプリンの食感のなかで、もちっとしたきんこ芋の食感がいきる良い組み合わせです。
きんこ芋ご飯
きんこ芋は低GI値(グリセミック指数)のため、血糖値が急上昇しにくい炭水化物食品であることから、ヘルシーな食材としても注目されています。
そこで、今回は白米にきんこ芋・雑穀・大麦を加えた「超ヘルシー芋ご飯」を作ってみました。
作り方は簡単で、研いだ白米1合に、大麦・八穀・細切れにしたきんこ芋を加えて炊くだけです。
水加減は、2合分の水量に設定しました。
炊きあがりました。ほんのりと芋の良い香りがします。きんこ芋つぶさないように気をつけて混ぜます。
出来上がりました。ほんのり甘いきんこ芋と、プチプチ食感の大麦・雑穀のコラボがとても美味しかったです。
隼人芋(にんじんいも)の料理レシピ
隼人芋の肉じゃが風
こちらが材料の隼人芋(大1個)・豚もも肉・糸こんにゃく・絹さやいんげん、です。
まずは隼人芋の皮をピーラーで剥き、一口大にカットします。
調理時間短縮のため、あらかじめラップをして電子レンジで加熱します(600Wで3分)。
炒めた豚肉を鍋に入れ、カットした隼人芋を加えます。
ダシ醤油・みりん・砂糖で味付けをし、糸こんにゃくを入れて2~30分ほど煮込みます。
ふっくら甘いきんこ芋と甘辛風味の具材がマッチして、とても美味しかったです。
隼人芋コロッケ
材料は、合い挽きミンチ・玉ねぎ・隼人芋(にんじんいも)です。このほかにフライ用として小麦粉・卵・パン粉を用意します。
隼人芋は繊維と垂直方向に輪切りし、しっかりと茹で上げます(20~30分)。
隼人芋を茹でている間に、合い挽きミンチとみじん切りにした玉ねぎを弱火でじっくりと炒めます。
隼人芋が茹で上がりました。しっかりと水切りをします。
すりこぎで茹で隼人芋をしっかりときめ細かくなるまでつぶしていきます。
そこに、先ほどの合い挽きミンチと玉ねぎを加えます。
お好みの大きさと形に成型します。
まず、小麦粉をまぶし、溶き卵を絡め、最後にパン粉をつけて揚げていきます。
中身はすでに加熱済みですので、表面がきつね色になるまで揚げて完成です。
ほっこりほくほくで、とても美味しかったです。
隼人芋と牛すじの煮物
材料は牛すじ・厚揚げ・ゆで卵・隼人芋(にんじんいも)です。このほかに、お好みの具材を加えてもよいでしょう。
牛すじは臭みが出ないように、あらかじめフライパンで焼いておきます。
牛すじが焼きあがったら、牛すじ→ゆで卵と厚揚げ→最後に隼人芋の順番で圧力なべに入れていきます。
水をひたひた加減で加え、ダシ醤油・砂糖・みりんなどで味付けをし、圧力をかけて30分ほど煮込みます。
隼人芋(にんじんいも)は煮崩れしにくい特性があるので、さまざまな煮物料理におすすめです。
芋ようかん
まずは、皮を剥いた隼人芋を輪切りにし(繊維を短くするよう横方向に切る)、約20分茹で上げます。
茹で上がった隼人芋を丁寧につぶしていきます。本来の芋ようかんは口触りを良くするために、裏ごしをして繊維分を取り除きますが、せっかくの豊富な植物繊維がもったいないので、今回は裏ごしなしで進めていきます。
水300ml・つぶした茹で隼人芋(小2個分)・寒天4gを入れ、焦がさないようにしっかりと加熱しながら混ぜ合わせます。
器に移し、粗熱をとってから冷蔵庫で冷やします。
出来上がりました。
先ほどの自作きんこ芋入り羊羹と一緒にいただきました。素朴な芋の風味が活かされて美味しかったです。
スイートポテト
芋ようかん作りで練り隼人芋を作りすぎたので、一部を流用してスイートポテトも作りました。
隼人芋にバターと砂糖を加え、しっかりと練り合わせます。
アルミ箔の容器に適量を入れます。
トースターで8分前後焼き挙げて完成です。
素朴な美味しさが際立つスイートポテトになりました。