腹筋の構造と名称および作用について解説します。シックスパックを手に入れたい…でも、やみくもに腹筋運動を始める前に鍛える対象について理解することが、急がば回れで重要です。また、あわせて腹筋群と共働関係・拮抗関係にある体幹の筋肉群についても解説します。
腹筋群の部位と名称
一般に「腹筋」と呼ばれる筋肉は単一の筋肉ではなく、厳密には4つの筋肉が折り重なって四層構造で形成されている「腹筋群」です。
腹筋群を構成する筋肉とその名称は、表層から順に以下の通りです。
①腹直筋(Rectus abdominis)
②外腹斜筋(Abdominal external oblique muscle)
③内腹斜筋(Abdominal internal oblique muscle)
④腹横筋(Transversus abdominis muscle)
腹直筋の構造と作用
腹直筋は、腹部表層に位置する筋肉でいわゆるシックスパックと呼ばれる部分です。
体幹を屈曲・回旋・側屈させる作用のほか、腹圧を加える働きもあります。
腹直筋の作用
体幹部の屈曲・回旋・側屈
腹直筋の起始停止
起始
恥骨結合部および恥骨結節上縁
停止
第5?7肋軟骨および剣状突起
腹直筋の支配神経
肋間神経
腹直筋の具体的な働き
体幹を曲げる動作に働きます。
筋トレにおける具体的な働き
クランチ系種目やレッグレイズ系種目の体幹を前に曲げる動作において主働筋として働きます。
外腹斜筋の構造と作用
外腹斜筋は体幹側部に位置しており、肋骨および胸郭の引き下げ・脊柱の屈曲・骨盤の引き上げという作用を持っています。
外腹斜筋の作用
胸郭を引き下げる・脊柱を曲げる・骨盤を引き上げる
外腹斜筋の起始停止
起始
第5~12肋骨外側面
停止
腸骨稜および鼠径靱帯・白線
外腹斜筋の支配神経
肋間神経・腸骨下腹神経・腸骨鼠径神経
外腹斜筋の具体的な働き
腹直筋・内腹斜筋と協働して体幹を曲げる・捻る・横に倒す動作において働きます。
筋トレにおける具体的な働き
クランチツイスト系種目やサイドベント系種目の、身体を捻る・横に曲げる動作において働きます。
内腹斜筋の構造と作用
内腹斜筋は外腹斜筋の深層に位置しており、外腹斜筋の補助筋として同様の作用を持ちます。
内腹斜筋の作用
肋骨を引き下げる・脊柱を曲げる・骨盤を引き上げる
内腹斜筋の起始停止
起始
鼠径靱帯・腸骨稜・胸腰筋膜
停止
第10~12肋骨下縁・腹直筋鞘および白線
内腹斜筋の支配神経
肋間神経・腸骨下腹神経・腸骨鼠径神経
内腹斜筋の具体的な働き
外腹斜筋を補助し、腹直筋と協働し体幹を曲げる・捻る・横に倒すといった動作において働きます。
筋トレにおける具体的な働き
クランチツイスト系種目やサイドベント系種目の、身体を捻る・横に曲げる動作において主働筋である外腹斜筋を補助するように働きます。
腹横筋の構造と作用
腹横筋筋は腹筋群の最深層に位置しており、下位肋骨の下方に引き下げるとともに腹圧を上昇させる作用があります。
腹横筋の作用
下位肋骨を下方に引く・腹圧を高める
腹横筋の起始停止
起始
第7~12肋軟骨内面・鼠径靱帯・腸骨稜・胸腰筋膜
停止
腹直筋鞘
腹横筋の支配神経
肋間神経・腸骨下腹神経・腸骨鼠径神経
腹横筋の具体的な働き
腹圧を維持するとともに呼吸の補助に働きます。
筋トレにおける具体的な働き
腹筋系種目だけでなく、あらゆるトレーニング種目において体幹の姿勢を維持するために働きます。
腸腰筋群の構造と作用
腸腰筋群は、骨盤と大腿骨をつなぐ股関節周辺のインナーマッスルで、腹筋群のなかでも腹直筋下部と強い共働関係にあります。大腰筋・小腰筋・腸骨筋から構成され、脚を上げる作用とともに骨盤の位置を維持する作用もあります。
脊柱起立背筋の構造と作用
脊柱起立筋は、脊柱沿いのインナーマッスル群である長背筋群(板状筋・脊柱起立筋・横突棘筋)の一部で、腸肋筋・最長筋・棘筋の三つの筋肉から構成されており、脊柱を起立(伸展)させ姿勢を維持する作用があります。腹筋群とは拮抗関係にある筋肉群で、腹筋を鍛えるのならば、あわせて鍛えたい筋肉群と言えるでしょう。
全身の筋肉名称と作用
全身の筋肉名称と作用および鍛え方(筋力トレーニング)については下記のデジタル図鑑をご参照ください。
▼さらに詳しい筋肉の名称・構造・作用