ジムのマシントレーニングだけで筋肥大バルクアップすることは可能でしょうか?
結論から言えば、答はYESです。
マシントレーニングはフリーウエイトトレーニングに比べ、ウエイトのブレをマシンが支えてくれるため、効率的に筋肉に負荷がかけられるので、むしろ筋肥大に向いているトレーニング方法であるとも言えます。
ただし、効率的にマシンで筋肥大していくためには、ターゲットにする筋繊維の種類に最適な負荷回数設定、有効な種目、トレーニングの順番などを理解する必要があります。それらを、わかりやすく解説します。
筋肥大筋トレでターゲットにする筋繊維
速筋繊維TYPE2bを狙って高負荷低回数で鍛える
筋力トレーニングの対象となる骨格筋は筋繊維が束となって構成されていますが、その筋繊維には主に速筋と遅筋の二種類があり、さらに速筋は2つのタイプに分けられます。そして、それぞれに特性が異なり、トレーニングでの適正反復回数も異なります。
①遅筋(筋繊維タイプⅠ)
1分以上の持久的な運動において、持続的に収縮する筋繊維です。トレーニングをしても筋肥大は起こらず、筋スタミナが向上します。筋トレにおいては20回の反復で限界がくるような軽負荷でトレーニングを行います。
②速筋(筋繊維タイプⅡa)
30~60秒程度のやや持久要素もある瞬発運動において、持続的かつ瞬発的に収縮する筋繊維です。トレーニングによってやや筋肥大するとともに筋スタミナも向上します。筋トレにおいては12~15回程度の反復で限界がくるような中負荷でトレーニングを行います。
③速筋(筋繊維タイプⅡb)
30秒未満の瞬発運動において、爆発的に収縮する筋繊維です。トレーニングによって強く筋肥大します。筋トレにおいては6~12回程度の反復で限界がくるような高負荷でトレーニングを行います。
骨格筋を構成している筋繊維には大きく分けて速筋と遅筋の2種類があります。速筋は白っぽいため白筋とも呼ばれます。収縮スピードが速く、瞬間的に大きな力を出すことができますが、長時間収縮を維持することができず張力が低下してしまいます。遅筋は赤みがかった色から赤筋とも呼ばれます。収縮のスピードは比較的遅く、大きな力を出すことはできませんが、疲れにくく長時間にわたって一定の張力を維持することができます。
▼厚生労働省公式ページ
参照記事:筋トレ目的別の適切な負荷回数設定
つまり、筋肥大バルクアップしていくためには、強く筋肥大する筋繊維TYPE2b(速筋|FG筋)をターゲットにして鍛えることになり、10回前後の反復回数で限界がくるような高負荷設定でセットをこなしていきます。
マシントレーニングで筋肥大するための基礎
高負荷複合関節種目中心に筋トレをする
筋トレ種目には、複数の関節と筋肉を同時に動かす複合関節種目(コンパウンド種目)と、単一の筋肉だけを動かす単関節種目(アイソレーション種目)とがあります。
当然、複合関節種目のほうが高重量を扱え、筋肉に対する負荷も大きくなります。
マシントレーニングで筋肥大バルクアップにするためには、高重量の複合関節種目を中心に限界まで行い、仕上げ種目である単関節種目は「余力があれば行う」程度、または、全く行わなくても問題ありません。
高負荷複合関節種目の1セット1セットを限界まで行う、このことに集中するほうが、あれこれ細かな種目をやるよりも遥かに筋肉は大きくなります。
休養をしっかりとり十分に筋肉を超回復させる
バルクアップするためのマシントレーニングは、ダイエット目的や細マッチョ目的の筋トレとは違い、非常に高い負荷が筋肉にかかります。十分に休養期間をとり、筋肉をしっかりと超回復させながらトレーニングを行っていくことが必須です。
また、高重量トレーニングで負担がかかるのは筋肉だけでなく、さらに回復の遅い関節や靭帯にも負担がかかります。ですので、通常の筋トレよりも「頑張って休養する」くらいの感覚で身体を休ませる必要があります。
このために最適なのが、全身の筋肉を3つに分割し、ローテーションで一週間をかけてトレーニングしていく部位分割法(スプリットトレーニング)ですが、詳しくは後述します。
タンパク質+カロリーを十分に摂取する
筋肉をゴリマッチョレベルに大きくするためには、その材料となるタンパク質の摂取(一日体重1kgあたり3gの純タンパク質)が必須です。
1gの純タンパク質は肉類換算でおよそ5gですので、体重70kgの場合、70×3×5≒1000g=1kgの肉類を毎日食べなくてはいけません。
また、タンパク質だけでは栄養素が不足しており、摂取したタンパク質を筋肉に合成するための「筋肉合成カロリー」がタンパク質の約2倍は必要です。
純タンパク質の1gカロリーは4kcalですので、肉類1kg相当の純タンパク質200gのカロリーは800kcalとなります。つまり、肉類に炭水化物などを追加して、合計2400kcalの食事が毎日の最低ラインになります。
それでは、次の項目では筋肥大バルクアップに適した複合関節運動トレーニング種目を、筋肉部位別に解説していきます。
大胸筋の筋肥大マシン筋トレ
スミスマシンベンチプレス
フリーウエイトトレーニングのバーベルベンチプレスに近い感覚で大胸筋を鍛えることのできるマシン筋トレがスミスマシンベンチプレスです。
スミスマシンはウエイトのグラつきをマシンのレールが支えてくれるので挙上動作に集中でき、バーベルベンチプレスよりも高重量で鍛えることができるメリットがあります。
反面、グラつきやブレを止める体幹インナーマッスルが鍛えられにくいというデメリットもあります。
バリエーションとして、インクライン・デクライン・ナローグリップ・ワイドグリップ等のやり方があります。
◆スミスマシンベンチプレスのやり方と動作ポイント
①ベンチに仰向けになり、肩甲骨を寄せ、80cm前後の手幅でシャフトをグリップし、足を踏ん張りブリッジを作って構える
②バーベルをラックアウトし、胸の真上まで水平移動させる
③肩甲骨を寄せたまま、ある程度筋力でコントロールしてシャフトを胸の上に下ろす
④肩甲骨を寄せたまま、腕を押し出しバーベルを元の位置まで上げる
⑤しっかりと肘を伸ばし、顎を少し引いて大胸筋と上腕三頭筋を完全収縮させる
◆ワンポイントアドバイス
ストリクトに効かせるためには、勢いをつけてシャフトをバウンドさせないようにすることと、腰を浮かせないようにすることが大切です。
マシンチェストプレス
ジムにあるマシンで大胸筋を鍛えるのにおすすめなのが、マシンチェストプレスです。
肩関節の保護のため、肘が肩より上にこないようにシートを調整しましょう。
◆マシンチェストプレスのやり方と動作ポイント
①バーが肩のラインよりも下になるようにシートの高さを調整する
②シートに座り、肩甲骨を寄せ、バーをグリップして構える
③肩甲骨を寄せたまま、肘を伸ばしてバーを前に押し出す
④バーを押し出したら、顎を引いて大胸筋を完全収縮させる
⑤ゆっくりと筋肉に効かせながら元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
肩を痛めないためには、バーが肩のラインよりも下になるようにシート調整を行うことが大切です。
三角筋の筋肥大マシン筋トレ
スミスマシンショルダープレス
スミスマシンショルダープレスはバーベルトレーニングに近い感覚で行える三角筋の筋トレ方法です。
マシンのレールがウエイトのブレを止めてくれるので、バーベルより高重量で負荷をかけることができます。
◆スミスマシンショルダープレスのやり方と動作ポイント
①背すじを伸ばし、肩の高さでシャフトをグリップして構える
②背中が丸くならないように視線を上に向け、腕を上に押し出していく
③腕を押し出したら、腕をしっかりと伸ばし三角筋を完全収縮させる
④ウエイトに耐えながら、筋肉に効かせつつ元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
三角筋は背筋や大胸筋に隣接しているため、肩甲骨を動かしてしまうと負荷がそれらの体幹表層筋に逃げてしまいますので、セット中は肩甲骨を動かさないことが大切です。
マシンショルダープレス
マシンショルダープレスは三角筋のマシントレーニングの基本となる種目です。
肩関節保護のため、肘が体幹より後ろにならないように動作してください。
◆マシンショルダープレスのやり方と動作ポイント
①背すじを伸ばしてシートに座り、バーをグリップして構える
②背中が丸くならないように視線を上に向け、腕を上に押し出していく
③腕を押し出したら、腕をしっかりと伸ばし三角筋を完全収縮させる
④ウエイトに耐えながら、筋肉に効かせつつ元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
三角筋は背筋や大胸筋に隣接しているため、肩甲骨を動かしてしまうと負荷がそれらの体幹表層筋に逃げてしまいますので、セット中は肩甲骨を動かさないことが大切です。
上腕三頭筋の筋肥大マシン筋トレ
マシンディップ
上腕三頭筋全体に効果的なマシンがディップスマシンです。
体重を使わずに筋力だけで押し込める重量設定にすることが大切です。
◆ディップスマシンのやり方と動作ポイント
①シートに座りバーをグリップして構える
②体重を乗せないように気をつけてバーを押し下げる
③バーを押し下げたら、肘をしっかりと伸ばして上腕三頭筋を完全収縮させる
④ウエイトに耐えながら、筋肉に効かせつつ元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
体重を乗せて動作を行うと、高重量でトレーニングできますが上腕三頭筋への負荷は弱まりますので、しっかりとシートに腰をつけて腕の力だけで動作ができる重量設定で行ってください。
背筋群の筋肥大マシン筋トレ
スミスマシンデッドリフト
スミスマシンデッドリフトはフリーウエイトの感覚で行えるマシントレーニングです。
膝をつま先より前に出さず、胸を張り腰を反らせる動作ポイントはバーベルデッドリフトと同様です。
◆スミスマシンデッドリフトのやり方と動作ポイント
①背すじを伸ばし、足を肩幅程度に開き、膝がつま先よりも前に出ないようにお尻を突き出し、足の外側でシャフトをグリップして構える
②まずは膝を伸ばす動作で初動を行い、ウエイトが床から浮いたら、肩甲骨を寄せながら立ち上がりシャフトを引き上げていく
③シャフトを引き上げたら、肩甲骨を寄せきり背筋群を完全収縮させる
④ある程度コントロールした速度で元に戻り、反動を使わずに再びバーベルルを引き上げていく
◆ワンポイントアドバイス
スミスマシンは軌道が垂直に固定されているので腰がシャフト重心から離れやすく、腰を痛める原因になりますので、バーベルデッドリフトよりもさらに足を前に置き、シャフトから身体が離れないようにすることが重要です。
T-バーローイング
Tバーローイングはフリーウエイト感覚で背筋群を鍛えることのできるトレーニングです。
グリップの向きや幅によって広背筋~僧帽筋まで効果的な部位が変化します。
広めのグリップだと広背筋に、狭いグリップだと僧帽筋に負荷がかかります。
◆T-バーローイングのやり方と動作ポイント
①シャフトをまたいで立ち、胸を張り背すじを伸ばし、膝がつま先よりも前に出ないようにお尻を突き出して前傾姿勢を作り、バーをグリップして構える
②肩甲骨を寄せながらバーをを引き寄せていく
③バーを引き寄せたら、肩甲骨を寄せきり、顎をやや上げて背筋群を完全収縮させる
④ウエイトに耐えながら、筋肉に効かせつつ元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
腰を曲げ、背中が丸まった状態で動作を行うと腰に対して大きな負担がかかりますので、視線を上に向け、背すじを伸ばすことを意識してください。
ケーブルラットプルダウン
ジムで行うマシン筋トレのなかでも広背筋を鍛えるのに最適な種目がラットマシンプルダウンです。
胸を張り、肩甲骨を寄せるように引くと効果的です。
また、ケーブルアタッチメントをパラレルグリップに交換することで、僧帽筋に刺激を集中させることが可能です。
◆ラットマシンプルダウンのやり方と動作ポイント
①シートに座り、腕を伸ばしてケーブルアタッチメントをグリップして構える
②肩甲骨を寄せながら腕を引き寄せていく
③腕を引き寄せたら、肩甲骨を寄せきり、顎をやや上げて背筋群を完全収縮させる
④ウエイトに耐えながら、筋肉に効かせつつ元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
背中が丸まっていると、背筋群が完全収縮しにくいので、視線を上に向けて背すじを伸ばすようにするのがポイントです。
上腕二頭筋の筋肥大マシン筋トレ
ケーブルドラッグカール
ジムでのケーブルマシンを使ったケーブルカールでは、ダンベルカールやバーベルカールと違い、最大収縮のポイントまで負荷がかかり続けるので非常に効率的に上腕二頭筋を鍛えることが可能です。
◆ケーブルカールのやり方と動作ポイント
①背すじを伸ばして立ち、腕を伸ばした位置でケーブルアタッチメントをグリップして構える
②肘の位置を動かさないように注意し、肘を曲げて拳を引き上げていく
③拳を引き上げたら、ウエイトに耐えながら筋肉に効かせつつ元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
肘の位置を動かすと僧帽筋に負荷が逃げやすくなりますので、しっかりと肘の位置を固定して行うことが大切です。
下半身の筋肥大マシン筋トレ
スミスマシンスクワット
バーベルトレーニングに近い感覚で大腿四頭筋を鍛えることのできるのが、スミスマシンを使ったスミスマシンスクワットです。
マシンがウエイトのブレを止めてくれるので、バーベルスクワットに比べ、より高重量で集中的に鍛えることが可能です。
◆スミスマシンスクワットのやり方と動作ポイント
①足を肩幅程度に開き、背すじを伸ばし、シャフトをかついで構える
②膝がつま先よりも前に出ないように気をつけ、お尻を突き出しながらしゃがんでいく
③太ももが床と平行になるまでしゃがんだら、反動を使わずに同じ軌道で立ち上がる
◆ワンポイントアドバイス
フリーウエイトでのスクワットと違い、軌道が垂直に固定されているため、膝への負担を避けるために、やや足を前においてマシンにもたれる意識で構えてください。
マシンレッグプレス
ジムでのマシントレーニングのなかで、高強度・高負荷で大腿筋群を鍛えることのできるトレーニング種目がマシンレッグプレスです。
爪先で押すイメージで行うと下腿三頭筋にも効果があります。
◆マシンレッグプレスのやり方と動作ポイント
①膝がつま先よりも低くならないように構える
②膝を伸ばして足を押し出していく
③足を押し出したら、しっかりと膝を伸ばして大腿四頭筋を完全収縮させる
④ウエイトに耐えながら、筋肉に効かせつつ元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
セット終盤で苦しくなってきたら、手で膝を押してセルフ補助することも可能です。
ハックスクワット
斜めにマシンにもたれ、大腿四頭筋に負荷を集中してトレーニングができるマシン筋トレがハックスクワットです。
膝関節保護のため、膝がつま先より前に出ないように構えてください。
◆ハックスクワットのやり方と動作ポイント
①膝がつま先よりも前に出ないように気をつけて構える
②膝を伸ばし、ウエイトを押し上げながら立ち上がる
③立ち上がったら、膝をしっかりと伸ばして大腿四頭筋を完全収縮させる
④ウエイトに耐えながら、筋肉に効かせつつ元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
反動を使って動作を行うと、膝関節に負担がかかりますので注意してください。
一週間の筋肥大マシン筋トレプログラム
それでは、ここからは一週間の具体的な筋肥大マシン筋トレプログラムを例示していきます。セット数は体力に応じて増減させてください。なお、通常のトレーニングよりもセット数は少なく設定していますが、1セット1セット限界まで追い込むことを前提にしたヘビートレーニングですので、全セット全力で行ってください。
週1回目のトレーニング(上半身の押す筋肉+腹筋)
?スミスマシンベンチプレスまたはマシンチェストプレスを3~5セット
②スミスマシンショルダープレスまたはマシンショルダープレスを2~3セット
③スミスマシンナローベンチプレスを2~3セット
週2回目のトレーニング(下半身の筋肉)
?スミスマシンスクワットまたはマシンレッグプレスを3~5セット
②ハックスクワットを2~3セット
週3回目のトレーニング(上半身の引く筋肉+腹筋)
?スミスマシンデッドリフトまたはT-バーローイングを3~5セット
?ケーブルラットプルダウンを2~3セット
?スミスマシンドラッグカールを2~3セット
筋トレと食事について
食事もトレーニングの一環
筋力トレーニングを行ったら、それで終わるのではなくしっかりと目的に合わせた適切な食事を摂ることが重要です。筋トレの成果は「トレーニング半分、食事半分」とも言われるほどです。
全マシン筋トレ種目一覧
大胸筋のジムマシン筋トレ
スミスマシンベンチプレス
マシンチェストプレス
マシンチェストフライ
ケーブルフライ