腕相撲に勝つためのコツや握り方を、アームレスリング競技の技=吊り手(トップロール)と噛み手(フック)ごとに具体的な握り方(指の使い方)や構え方も含めて解説します。また、後半では腕相撲が強くなるために必要な筋肉部位とその筋トレ方法や器具についてもご紹介します。
アームレスリング競技において、テクニックは非常に重要な要素で勝敗を大きく分ける部分です。その技術を腕相撲に用いれば、非常に有利に勝負を運ぶことができます。
なお、国際競技としてのアームレスリングは世界規格公式公認台を用い、国際ルールによって行う必要がありますが、本記事ではあくまでも一般的な腕相撲・アームレスリングに関して記載しています。
【アームレスリング主戦績】
全日本マスターズ80kg超級2位
アジア選手権マスターズ90kg級3位
腕相撲・アームレスリングの二つの技
トップロールとフックとがある
腕相撲やアームレスリングには、てこの原理で相手の指先を吊り上げて倒すトップロールと、自分が有利な位置に手首を巻き込んで倒すフックとがあります。
この二つの技で、必要となる筋肉部位が一部異なってきますので、まずはその技の特性を知ることが重要です。
吊り手(トップロール)という技のコツと握り方
こちらは、全日本マスターズ80kg超級の本選決勝での筆者で、トップロールがきれいに決まり勝利した時の写真です。まずは、このトップロール=吊り手という技がどのようなテクニックなのかを解説していきます。
てこの原理で相手の指先を吊り上げる
トップロールは、大きく二つの動きから構成される技で、まずはスタート直後に肘を支点にして自身の身体(力点)を後方に倒し、そのてこの力で相手の指先(作用点)を上方かつ後方に吊り上げます。この動きが、トップロールの「トップ」の部分です。
こちらが、てこの原理で相手の指先を上方・後方に吊り上げた状態です。この状態に入りやすくするためには、はじめの構え方と握り方で重要なポイントがあります。
てこ(梃子、梃,英語: Leverage)とは、弱い力で重たいものを動かしたり、微小な運動を大規模な運動に変換する物理のこと。単純機械の一つであり、あらゆる機械の基礎となっている。引用:Wikipedia「てこの原理」
トップロールの構え方
吊り手(トップロール)を効率的に使うための構え方は、肘をできるだけ身体の中央に近づけることが大切です。肘が外寄りにあると、ロールをかける時に脇が開いてしまい、逆転される可能性がありますので、しっかりと脇を閉められるように構えます。
トップロールで有利になる握り方
こちらは、いわゆる素人腕相撲の様子ですが、トップロールに必要不可欠な肝心な部分が間違っています。
こちらは、トップロールの握りをした筆者ですが、素人とアームレスラーの握りの大きな違いがわかるでしょうか?
答は、人差し指を親指にかける(アームレスラー)と親指を出して握る(素人)です。
アームレスリングのなかでも、特にトップロールは「相手の親指をコントロールして倒す技」と言い換えることができます。ですので、勝負の間は常に相手の親指を挟みつけています(ピンチする)。
実際に、親指と人差し指で輪っかを作ってみてください。人差し指で親指を押させえるのと、親指で人差し指を押さえるのとでは、どちらがピンチする力が強いですか?
当然、前者=人差し指で親指を押さえる握り方ですね。
ちなみに、後述する噛み手(フック)でもこのような握り方をすることが少なくありませんが、トップロールほど絶対的な要素ではありません。
続いて、この輪っかを作るときのポイントです。上図のように、トップロールでは相手の指先を狙って引き伸ばしていきますが、この時に相手の指先が自身の手の甲に深く入っていると、初動で押さえ込まれてしまって上手く技が決まりません。
当然、フックの選手は指先を吊り上げられないように、できるだけ深く、相手の手の甲まで握りこもうとします。
これを避けるための握り方がこちらのものです。人差し指で親指を押さえるときに、ただ押さえるのではなく親指を内側にねじ込むように輪っかを作ります。
実際にやっていただければわかりますが、握りに厚み・丸みが出て、手の甲までの距離が長くなり、相手が深く握りにくくなります。
中指を支点にてこの原理で相手の手をひっくり返す
こちらは、トップロールの動きをスローで行った動画です。まずはてこの原理で相手の指先を後方に伸ばし、その後、手首から先を返して(ロール)させて相手の手の平を完全にひっくり返しています。
実は、この最後のとどめ=ロールでもう一度「てこの力」を使います。序盤の「トップ」を腕全体を使った大きなてこだとすれば、最後の「ロール」は手の平で行う小さなてこです。
当然、てこの力なので支点が存在しますが、それは中指の先端です。
親指と人差し指で相手の親指を捕まえておき、中指を中心にして「小さなてこ」でひっくり返すのです。なお、この「小さなてこ」を使うためには、自分の手首(リスト)が入った(曲がった)状態で、なおかつ相手のリストが伸びた状態が必要です。
後方への吊り上げが決まったら、慌てず相手の指と手首を伸ばしてからロールをかけてください。ロールを焦って中途半端な状態になると、相手に手首を巻き込まれ(フックされ)大逆転されてしまいます。
噛み手(フック)という技のコツと握り方
力任せに手首を巻き込むのではなく自分だけ上に巻き込む
最初の写真をアップにしたものがこちらの画像ですが、向かって左の選手のフックがきれいに決まっています。
噛み手(フック)はパワー技とされ、「力任せに手首を巻き込む」と誤解されがちですが、実際はそんなことは全くありません。
そもそも、力任せに手首を巻き込んだだけだと、全くの五分五分です。それでは、技でも何でもありませんよね。
写真を見てください。一見、お互い同等に手首を巻き合っているように見えますが、自分に有利なようにフックしているのは、あくまでむかって左の選手です。
手の高さ(指先の高さ)を見てください。明らかに左の選手が指を上にしています。基本的に、アームレスリング・腕相撲では手が相手より下になったら力が入らず非常に不利です。右の選手は、すでにまともに力が入れられる状態ではありません。
フックは、二段階の技で、一度このように相手を「捕まえ」そして、そこから相手の親指を倒していきます。なお、捕まえる動作は横方向で、肘をスライドさせながら指先を相手の手の甲の深い場所へ滑り込ませます。
フックの構え方
フックで相手を捕まえるためには、肘をスライドさせる助走の距離が必要になります。ですので、フックを使う時はトップロールの時と違い、肘をやや外側において内側にスライドさせられる余裕を作っておきます。
フックで有利になる握り方
フックは、一度相手を捕まえる必要がありますが、具体的にどこを捕まえるかと言えば「相手の手の甲」です。このため、握るときにはできるだけ深く、相手の手の甲まで握りこむ必要があり、時には親指から人差し指を外し、ピンチ力を犠牲にしても指先を深く入れます。
また、相手の手が大きく、手の甲まで握りこめないときは、あえて指先の力を抜いておき、スタートと同時に手首をストロークしながら指先を奥まで滑り込ませていくテクニックもあります。
イメージとしては、ややすくい上げるような軌道で手首をストロークしフックしていきます。
真横に親指をねじ込んで倒していく
こちらは、執筆者のジムで練習していたアームレスリング選手が、U21(21歳以下)の全日本選手権で優勝したときの動画です。
一度捕まえて(フックして)、その後で真横に親指をねじ込むような軌道で相手の親指を倒していく様子がおわかりいただけると思います。
最初に解説した、指の「上下の概念」がわかりにくくなるかもしれませんが、相手の上をとるのは「捕まえる瞬間」であり、捕まえたら自分の親指が上に他の指先が下になるような回転で相手の親指を捻っていきます。
なお、この時に薬指と小指の握り方が甘いと、そこから相手が手首をロールさせ、大逆転のトップロールが決まってしまいますので、噛み手(フック)においては薬指と小指の握りは、トップロール以上に重要です。
第三の技・サイドアタック
技は無限に変化し個人特性が強い
なお、今回解説したトップロールとフックの技術論は、あくまでも一般的なものであり、技の軌道や特性は選手一人一人で大きく異なります。
腕相撲・アームレスリングで勝つためのコツ・握り方は、あくまで無限に変化するものであり、今回解説した限りではないことをつけ加えておきます。
こちらは、典型的なトップロールの動画です。
こちらは、典型的なフックの動画です。
腕相撲で使う筋肉部位と筋トレ
ここからは、腕相撲の必勝法・勝ち方のコツ=テクニック(トップロール・フック)の技の種類に合わせた最適な筋トレ方法…なかでも自宅でできるメニュー(自重トレーニング・ダンベルトレーニング)を厳選してご紹介します。
噛み手(フック)と吊り手(トップロール)にわけられる
腕相撲をアームレスリングの技術で考えた場合、大きく二種類の勝ち方のコツがあります。
一つは素人同士の腕相撲にみられる手首を巻き込む勝ち方で、アームレスリングではフック(かみ手)と呼ばれています。
もう一つは、素人の腕相撲ではあまり見られない、相手の指先を後方に引き込んで倒す勝ち方で、アームレスリングではトップロール(つり手)と呼ばれています。
それぞれのテクニックでは、主として使う筋肉の部位が異なるため、使う技に合わせた筋トレをするのが「腕相撲が強くなる」ためには近道となります。
腕相撲に必要な筋肉部位
①前腕筋群
アームレスリングは「前腕のスポーツ」とも呼ばれるほど、前腕筋群の筋力が要求され重要となる競技で、それは腕相撲においてもほぼ同じです。
必要となる前腕筋の部位はトップロールとフックで異なり、トップロールでは親指を立てる方向の筋力(手首の外転力)が非常に重要になります。
前腕筋(ぜんわんきん)は前腕の筋肉の総称。構成する筋肉|円回内筋・橈側手根屈筋・長掌筋・尺側手根屈筋・浅指屈筋・深指屈筋・長母指屈筋・方形回内筋・腕橈骨筋・長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋・回外筋・尺側手根伸筋・総指伸筋・小指伸筋・示指伸筋・長母指伸筋・短母指伸筋・長母指外転筋|引用:Wikipedia「前腕筋」
この筋力の主働筋となるのが、腕橈骨筋(わんとうこつきん)と呼ばれる前腕筋群でもっとも体積の大きな筋肉です。
腕橈骨筋(わんとうこつきん、brachioradialis muscle)は人間の腕の筋肉で肘関節の屈曲、前腕を回内回外位から半回内位に回旋を行う。上腕骨外側上顆、上腕骨外側下部から起こり、橈骨茎状突起で停止する。引用:Wikipedia「腕橈骨筋」
②上腕二頭筋・上腕筋
腕相撲やアームレスリングで強くなるためには、一般的に考えられている「肘を屈曲させる」コンセントリックな上腕二頭筋の筋力はあまり必要ありません。
これは、腕相撲やアームレスリングで勝つためには「最初から最後まで肘を90度に固定する」ことが理由ですが、肘を90度に固定する上腕二頭筋のアイソメトリックスな筋力は非常に重要です。
等尺性運動とは、関節の角度に目に見える動きがない筋肉の静的収縮を伴う運動の一種です。 「アイソメトリック」という用語は、ギリシャ語の「Isos」と「metria」を組み合わせたものです。引用:Wikipedia「Isometric exercise」
また、上腕二頭筋と共働する上腕筋は、体積が小さな筋肉であるため見落とされがちですが、実は半羽状筋という収縮力の強い筋繊維構造をしているため、上腕二頭筋よりも重要ともいえる筋肉です。
なお、上腕筋はどちらかと言えば、上腕二頭筋短頭よりも上腕二頭筋長頭と強い共働関係にあります。
トップロールとフックそれぞれに重要となる上腕二頭筋の部位は異なり、親指を上にした状態で強く働く上腕二頭筋長頭はトップロールに、手の平を上にした状態で強く働く上腕二頭筋短頭はフックに必要となります。
上腕二頭筋(じょうわんにとうきん、biceps brachii )は人間の上肢の筋肉。肘関節を屈曲した際によく浮き出る筋で通称力こぶと呼ばれている。引用:Wikipedia「上腕二頭筋」
上腕筋(じょうわんきん)は人間の上肢の筋肉。作用としては肘関節の屈曲を行う。屈曲時には烏口腕筋、上腕二頭筋などと共に協調して働く。引用:Wikipedia「上腕筋」
③大胸筋・背筋群
腕相撲・アームレスリングで勝つために重要な要素として、脇をしめ上腕を動かさないこともあげられます。アームレスリングでは「腕を固める」と言いますが、腕を固めるためには背筋群と大胸筋の両方を使います。
この二つの大きな筋肉を使う割合は、トップロールとフックでは異なり、トップロールは「背筋群で腕を固める」、フックは「大胸筋で腕を固める」イメージですが、どちらかが100%ではなく、あくまでも比率のことです。
④ローテーターカフ
アームレスリングの言葉に「親指の壁」というものがありますが、これはトップロール系選手・フック系選手問わず、親指が倒れたら「間違いなく負ける」からです。
この「親指を倒されない力」に重要な役割をするのが、回旋筋腱板=ローテーターカフと呼ばれる、肩甲骨に張りつくように位置している棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の四つの筋肉群です。
フック(かみ手)が強くなる筋トレ
フック(かみ手)は手首を巻き込み、身体を丸めて相手の腕を抱き込むようにして倒すテクニックをですが、このために主に必要となる筋肉が「大胸筋」「上腕二頭筋」「前腕筋」です。
それでは、それぞれの筋肉部位を鍛えるのに最適な筋トレ種目をご紹介しましょう。
フックに使う大胸筋の鍛え方
フックに必要となる大胸筋を、さらに細かく分解して考えると、腕を閉じたポジションで使われる大胸筋の部位を鍛えなくてはいけません。その部位は、大胸筋中央部分となり、鍛えるのに最適な種目が「ナローグリップ腕立て伏せ」と「ダンベルフライ」です。
ナローグリップ腕立て伏せ
手と手が胸の前で触れるくらいに狭く手幅をおいてください。この時に、両手の親指と人差し指で三角形を作るように構えると、手首に負担がかからずトレーニングができます。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①両手で菱形を作り、うつ伏せになり、背すじを伸ばして構える
②肩甲骨を寄せ、やや肘を外に張り出すように身体を下ろす
③身体を下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま、腕の力で身体を元の位置まで押し上げる
ダンベルフライ
こちらはフラットベンチとダンベルが必要になりますので、まずはご用意ください。
ダンベルフライのコツは、手を下ろすときにやや下半身方向(ヘソ側)に下ろすことです。また、可能な限り低く下ろして、大胸筋が最大に伸展・収縮するように意識するとさらに効果が高まります。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①仰向けになり肩甲骨を寄せて構える
②肩のラインよりヘソ側にダンベルを下ろす
③胸の上まで腕を閉じながらダンベルを上げる
④ダンベル同士を合わせてやや上へ押し出す
⑤ゆっくりと効かせながら元に戻る
フックに使う上腕二頭筋の鍛え方
上腕二頭筋(力こぶの筋肉)は長頭と短頭の二つの部位に分かれており、腕相撲のフックに必要なのは、なかでも短頭になります。短頭は手首を回内=内側に巻き込みながら腕を縮める働きがあるからです。
リバース懸垂
リバースグリップ(逆手)での懸垂は、上腕二頭筋短頭に非常に効果があります。上がるときだけでなく、下りるときも重力に逆らいながらゆっくりと動作をするようにしてください。
また、肩甲骨を寄せると背筋群を使うことになり、上腕二頭筋への負荷が低下しますので、やや背中を丸めたまま動作するのがポイントです。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①肩幅よりやや狭く手幅をとり、逆手で懸垂バーをグリップし、背すじを少し丸めて構える
②肩甲骨を寄せずに、腕力だけで上半身を引き上げる
③上半身を引き上げたら、同じ軌道でゆっくりと効かせながら元に戻る
コンセントレーションカール
コンセントレーションカールも上腕二頭筋短頭を鍛えるのに最適な筋トレです。ただダンベルを持ち上げるのではなく、手首を巻き込むように動作すると、より実戦的な筋力が鍛えられます。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①ベンチなどに座り、ダンベルを持った腕の肘を太もも内側に当てて構える
②肘の位置がずれないようにしっかりと固定し、ダンベルを持ち上げていく
③ダンベルを膝より上に持ち上げたら、回外回旋(小指が上を向く方向に手首を回す)して上腕二頭筋短頭を完全収縮させる
④同じ軌道でウエイトをコントロールしながら元に戻る
フックに使う前腕筋の鍛え方
リストカール
フックに必要な前腕筋の動きは「手首を曲げる力」です。このために最も効果の高い筋トレ種目がリストカールで、ダンベル・バーベル・ケーブルマシンなどで行うことができます。
回数にこだわらず、限界まで追い込むようにしてください。
フックに必要な握力の鍛え方
腕相撲に握力が大切なことはよく知られていますが、握力には三種類があることはあまり知られていません。
一般的に握力と呼ばれる、体力測定で計る握力は「クラッシュ力」と呼ばれる握りつぶす握力です。
腕相撲において、クラッシュ力のイメージで相手の拳を強く握り込むと、指先に圧力が集中してしまい、逆にトップロールで指先を狙われてしまい非常に不利になります。
フックに必要な握力は「ホールド力」と呼ばれる指全体が開かないようにする種類の握力で、相手の拳全体をまんべんなく包むように保持しなくてはいけません。
ホールド力を鍛える最善の方法は、バーベル・ダンベル・懸垂バーのシャフトにタオルやテーピングを巻いて太くし、握りにくいシャフトを保持しながらトレーニングをすることで養われます。
トップロール(つり手)が強くなる筋トレ
トップロールは、胸を張り背中の力で相手の指先を手前に引き込んで倒すテクニックですが、このために主に必要となる筋肉が「広背筋」「僧帽筋」「上腕筋」「前腕筋」です。
それでは、それぞれの筋肉部位を鍛えるのに最適な筋トレ種目をご紹介しましょう。
トップロールに使う広背筋・僧帽筋の鍛え方
トップロールに必要な背中の筋肉である広背筋と僧帽筋は、上から腕を引き下ろす、前から腕を引き寄せる動きをつかさどっています。ですので、このような動作の筋トレ種目をする必要があります。
パラレル懸垂
握り手を縦持ちにして行うパラレル懸垂がトップロールには最適の筋トレ種目と言えます。身体を引き上げるときに、実戦的なフォーム、つまり、胸を張り肩甲骨を寄せたフォームを意識することで、より腕相撲が強くなります。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①手の平が向き合うように懸垂バーをグリップし、背すじを真っ直ぐにして構える
②胸を張り、肩甲骨を寄せながら上半身を引き上げる
③上半身を引き上げたら、肩甲骨を寄せきり背筋群を完全収縮させる
④同じ軌道でゆっくりと効かせながら元に戻る
ダンベルローイング
ダンベルローイングもトップロール強化におすすめの筋トレ種目です。コツは胸を張り、顎を上げて動作をすることです。これにより、さらに実戦的な筋力が鍛えられます。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①片手をつき前を見て構える
②肩甲骨を寄せながらダンベルを上げる
③肩甲骨を寄せきり広背筋を完全収縮させる
④ゆっくりと効かせながら元に戻る
トップロールに使う上腕筋の鍛え方
トップロールでは、腕を身体と並行な状態で攻撃をかけます。ですので、主に使われる筋肉は一般的に考えられている上腕二頭筋ではなく、上腕の外側にある筋肉=上腕筋が主に使われます。上腕筋を鍛えるために最適な筋トレ種目がダンベルハンマーカールです。
ダンベルハンマーカール
ダンベルハンマーカールでありがちな間違いがバーを握りしめてしまうことです。握りしめると刺激が前腕筋に逃げてしまうので、親指と人差し指で輪をつくり、そこに乗せるようなイメージでカールを行ってください。反動を使わず、上げるときも下ろすときもコントロールすると一層有効です。
実際にシャフトを握りしめないダンベルハンマーカールのフォームを再現しましたので、ご参照ください。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①ダンベルを縦に持ち、肘を固定して構える
②上半身を反らせたり、肩を動かさずにダンベルを上げる
③ゆっくりと効かせながら元に戻る
トップロールに使う前腕筋の鍛え方
トップロールで最も大切なのは「ヘッドを立ち上げる」=親指側に手首を曲げる力です。この力を鍛えるのに効果が高いトレーニングがリストハンマーです。
リストハンマー
こちらもフックのリストカール同様に、回数にこだわらず、ひたすら限界まで鍛えこんでください。
トップロールに必要な握力の鍛え方
トップロールに必要な握力の種類は「ピンチ力」と呼ばれるつまむ力です。
具体的には、トップロールは相手の親指をコントロールして倒す技ですので、相手の親指を離さないピンチ力=親指と人差し指でつまむ力が非常に重要となります。
ピンチ力を鍛える方法としては、バーベル・ダンベル用のウエイト(プレート)を親指と人差し指でつまみ上げて保持するトレーニング方法が一般的です。
このトレーニングで指を曲げて保持を行うとクラッシュ力のトレーニングになってしまいますので、指は完全に伸ばすように意識してください。
腕相撲のサイドプレッシャーの鍛え方
腕相撲・アームレスリングの強さの重要な要素としてサイドプレッシャーの強さがあります。
このサイドプレッシャーの強さとは、具体的に相手と手を組んだ時に、「真横に押されない強さ」「横に腕がブレない強さ」のことです。
サイドプレッシャーが弱いと、スタート時点に腕が真横に数cmほどブレてしまい、相手に有利な位置をとられてしまいます。
サイドプレッシャーの強さの原動力は、上腕の回旋をつかさどっている、肩甲骨と上腕骨をつないでいるローテーターカフと呼ばれる棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋から構成されるインナーマッスルの強さです。
そして、もう一つは上腕筋肉群で唯一体幹と直接結合している上腕三頭筋長頭の強さも重要です。
ローテーターカフの鍛え方
ローテーターカフを鍛えるために必要なトレーニングは、エクスターナルローテーションとインターナルローテーションと呼ばれる二つの筋トレ方法です。必ず両種目を均等に行うようにしてください。
エクスターナルローテーション
インターナルローテーション
また、ローテーターカフはインナーマッスルなので、通常の筋トレのように強い負荷をかければ強くなるというものではありません。大胸筋や背筋群などを動作に動員しないように気をつけて、軽い重量で20~30レップの高回数をかけて鍛えるようにしてください。
上腕三頭筋長頭の鍛え方
上腕三頭筋長頭(図:赤)を鍛えるためにおすすめの種目が二つあります。一つは自重トレーニングのリバース腕立て伏せ(ベンチディップス)で、もう一つがダンベルトライセップスプレスです。
ベンチディップス
ベンチディップスは、上腕三頭筋のなかでも長頭を集中的に鍛えられる自重トレーニングです。肘をできるだけ閉じて動作を行うことがポイントです。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①椅子(ベンチ)に肩幅よりやや狭く手をつく
②脇を閉めて、できるだけ深く身体を下ろす
③反動を使わずに効かせながら元に戻る
ダンベルトライセップスプレス
ダンベルプレスとは逆方向にダンベルをグリップするダンベルトライセプスプレスは上腕三頭筋に負荷を集中させることが可能です。
正しい動作の手順は以下の通りです。
①ベンチ(床でも可)に仰向けになり、肩甲骨を寄せ、胸の上でダンベルを構える
②脇をあまりあけないように気をつけ、ダンベルを押し上げる
③しっかりとコントロールして効かせながらダンベルを下ろす
いずれの種目も効率的に上腕三頭筋に効かせるポイントは「肘を開かずに動作を行う」ということです。
腕相撲が強くなるトレーニング器具
筆者も長年のアームレスリング選手歴、県代表~日本代表~アジア選手権メダル奪取のなかで、数多くのトレーニング器具を使ってきましたが、まず鍛えるべきは、上腕筋・腕橈骨筋・ピンチ力の三つだと感じています。
そのために必要で、実際に筆者が使用してきた器具は以下の通りです。
①上腕筋:アームブラスター
アームカール系トレーニングで陥りがちなパターンが、「重量を追求して反動筋トレになる」というものです。
結局、反動を使って高重量を振り回しても、負荷は僧帽筋に逃げるばかりで腕は強くなりません。
アームブラスターを装着すれば、嫌でも反動は使えませんので、非常にストリクトなアームカールが行えます。
なお、筆者の運営するアームレスリングトレーニング用品ショップでは、頑丈なつくりのアームブラスターを品質確認して輸入・販売しています。
▼アームブラスターを見る
②腕橈骨筋:リストハンマー
アームレスリングの世界では「ヘッドの力」と呼ばれる「拳を立てる筋力」は、腕相撲においても非常に重要で、ヘッドを立てられずに「ヘッドが落ちた」状態になってしまうと、トップロール・フック問わず、まず勝つことはできません。
その主働筋になるのが腕橈骨筋と呼ばれる前腕上部外側に位置する、前腕筋群で最大の筋肉です。
③ピンチ力:スーパーグリッパー
握力は腕相撲の攻防において非常に重要で、トップロールの場合はピンチ力、フックの場合はホールド力と呼ばれる種類の握力の強さが要求されます。
いずれもハンドグリッパーで鍛えることが可能です。
筆者も一般部門の現役選手だった頃は、プラスチックグリップの普通のハンドグリッパーをキーホルダーにし、一日中、時間さえあれば握力を鍛えていましたが、半年も使えば壊れてしまいます。
ですので、このようなスーパーグリッパーを購入し、自宅や通勤の車中で常に握力を鍛えていました。
非常に頑丈で壊れず、強度も変えられて便利です。また、上下を逆にグリップするとピンチ力強化にも最適な角度になります。
最新の専用トレーニング器具
ウルトラグリップの最大の特徴は、従来のハンドローラーのように「支点が中心にない」ことです。従来のハンドローラーだと支点が中心にあるため、「手の中でローラーが転がる」状態であり、指の付け根付近にしか負荷がかかりません。
しかしながら、ウルトラグリップ2020の場合は、支点が中心にないため、力点が指先になり、リスト力に重要な指先から巻き込む力を効率的に鍛えることが可能になっています。
腕相撲に必要な握力と鍛え方
ここからは、腕相撲に勝つために必要な握力の種類と鍛え方を解説します。握力にはクラッシュ・ピンチ・ホールドの三種類があり、それぞれの特性を理解することが重要です。
握力の三種類とは
クラッシュ・ピンチ・ホールド
握力には三種類があり、それぞれクラッシュ力・ピンチ力・ホールド力と呼ばれています。
クラッシュ力
体力測定などで計るもっとも一般的な握力で、指を握りこんだ状態で握りつぶす力のことです。
手で握る道具を使う多くのスポーツ競技で、かなり重要な要素ですが、腕相撲やアームレスリングでは、相手の手は指を握りこめるほど小さくないので、あまり重要ではありません。
上の図のように、ハンドグリッパーを普通に握って反復することで鍛えることが可能です。
ピンチ力
トップロールを一言で表現すると「相手の親指をコントロールして倒す技」です。
腕相撲やアームレスリングで手を組んだときに、相手の親指をグリップするのは親指・人差し指・中指の三本で、握るときは指が半ば伸びた状態です。
この状態で必要となる握力は「つまむ力」=ピンチ力で、上図のようにハンドグリップを逆向きに保持して開閉することで鍛えられます。
トップロールのほうが自分に向いている人は、このようなハンドグリップの使い方のほうが、腕相撲で強くなるためには効率的です。
このほかにも、ブロックやウエイトプレートなどを親指・人差し指・中指の三本でつまんで保持する鍛え方もあります。
ホールド力
フックでトップロールに負けないためにもっとも重要なことは、指先を開かされずに相手の手の甲を押さえることで、このような握力をホールド力と呼びます。
ホールド力を鍛えるためにおすすめの方法はいくつかありますが、通常のトレーニングのなかで無意識に鍛えるためには、ウレタンなどをバーに巻きつけグリップを太くする方法が一般的です。
また、メディシンボールなどの重い球形のものを指全体で掴んで保持するトレーニング方法も有効です。
腕相撲の情報チャンネル
腕相撲・アームレスリングのテクニックやルールは年を追ってどんどん変化していきます。実際に試合に出る方などは、常に最新の情報を知っておくことも重要です。下記のチャンネルはJAWA日本アームレスリング連盟でも最上級クラスであるA1レフリーが運営するチャンネルで、日本のアームレスリングの最名門チーム「鉄腕」の選手たちも多数出演しています。