(僧帽筋・広背筋)を鍛える筋トレ方法(デッドリフト・ベントオーバーロー・プルオーバーなど)とそのバリエーションについて解説します。
バーベルでの背筋トレーニングは種目数が少ないものの、圧倒的な高負荷を与えられるので広く強い背筋をつくる上では欠かせないトレーニングです。
背筋の構造と作用
筋トレで主に鍛える背筋には、首の後ろに位置する僧帽筋と背面側部から中央部に分布する広背筋があり、広背筋はさらに側部と中央部に分けられます。各部位の作用は以下の通りです。
僧帽筋:腕を下から引き肩甲骨を寄せる作用がある。
広背筋中央部:腕を前から引く作用がある。
広背筋側部:腕を上から引く作用がある。
背筋全体に効果の高いバーベル筋トレ
広背筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止
読みかた:こうはいきん
英語名称:latissimus dorsi muscle
部位詳細:上部|下部
起始:下位第6胸椎~第5腰椎の棘突起・肩甲骨下角第9~12肋骨|正中仙骨稜・腸骨稜後方
停止:上腕骨小結節稜
①デッドリフト
こちらが基本的なデッドリフトの動画で、足の外側でバーベルをグリップするバリエーションのルーマニアンデッドリフト(ヨーロッパ式デッドリフト)です。
パワーリフティング競技においては、手足の長い欧米人が好むスタイルで日本人にはやや不向きですが、背筋群のトレーニングととらえた場合は、挙上における背筋の動員率が高いのでおすすめです。
デッドリフトは効果が高い反面、やり方を間違えると高負荷が腰椎にかかるため怪我のリスクも低くありません。怪我をしにくい正しいフォームは以下の通りです。
①胸を張る
②背中を反らせる
③お尻を突き出す
④上を見る
なお、高重量低レップのセットは怪我のリスクが高まりますので、初心者のうちは10~12レップの中負荷セットを推奨します。
◆バーベルデッドリフトのやり方と動作ポイント
①背すじを伸ばし、足を肩幅程度に開き、膝がつま先よりも前に出ないようにお尻を突き出し、足の外側でシャフトをグリップして構える
②まずは膝を伸ばす動作で初動を行い、バーベルが床から浮いたら、肩甲骨を寄せながら立ち上がりバーベルを引き上げていく
③バーベルを引き上げたら、肩甲骨を寄せきり背筋群を完全収縮させる
④ある程度コントロールした速度で元に戻り、反動を使わずに再びバーベルルを引き上げていく
◆ワンポイントアドバイス
腰を曲げ、背中が丸まった状態で動作を行うと腰に対して大きな負担がかかりますので、視線を上に向け、背すじを伸ばすことを意識してください。
なお、デッドリフトもバーベル筋トレの基本となる種目ですので、はじめから自己流の癖をつけず、専門家による情報を知った上で取り組むことが大切です。
②スモウデッドリフト
デッドリフトのもう一つのバリエーションがスモウデッドリフトで、手足の短い日本人向きのフォームです。
大きな足を開き両足の間をグリップするのが特徴で、背筋群だけでなく下半身の動員率も高いフォームなので、全身的に鍛えるトレーニングにおすすめです。
なお、グリップ位置以外の基本的なポイントは前述のルーマニアンデッドリフトと同じですが、加えて、膝をつま先の向いた方向に曲げることも膝関節保護のために重要になります。
③ハーフデッドリフト
腰に不安があったり、下半身を使わずに背筋群だけを鍛えたい場合に最適なバリエーションがハーフデッドリフト(またはブロックデッドリフト)です。
高さの設定としては、膝を曲げなくても動作ができる高さが目安になります。
トップアスリートのデッドリフト解説
下記の記事は、パワーリフティング元全日本王者のトップ選手に、デッドリフトに関して執筆していただいた、非常に論理的で重厚な最新記事です。デッドリフトの挙上重量向上を目指す方には、必読の内容となっております。
▼アスリート執筆記事
【デッドリフトのやり方とフォーム】種類別に効果的なセットメニューを元全日本王者が解説
広背筋中央部に効果の高いバーベル筋トレ
①ベントオーバーロー
広背筋のなかでも中央部に高い効果のあるバーベル筋トレ種目がベントオーバーロー(またはニーベントロー)です。
この種目も効果が高い反面、きちんとしたフォームで行わないと腰椎を痛めるリスクがあります。
ベントオーバーローの基本的で正しいフォームが上図のもので、様々な筋トレ種目で必要となる「ニーベントスタイル」と呼ばれる体勢です。
そのポイントは以下の通りです。
①胸を張る
②背中を反らせる
③お尻を突き出す
④膝をつま先より前に出さない
⑤上を見る
◆バーベルベントオーバーローのやり方と動作ポイント
①前傾姿勢を作り、腕を伸ばした位置でシャフトをグリップして構える
②肩甲骨を寄せながら、太ももにシャフトを沿わせるようにしてバーベルを引き上げる
③バーベルを引き上げたら、肩甲骨を寄せきり、やや顎を上げて背筋群を完全収縮させる
④ウエイトに耐えながら、筋肉に効かせつつ元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
腰に不安のある場合は、インクラインベンチを使ってうつ伏せに構えると腰への負担が大幅に軽減されます。
②バーベルベンチローイング
腰に不安があったり、より高重量で広背筋中央部を鍛えたい場合におすすめなのがベンチローイングです。
つい重い重量設定をしがちですが、肩甲骨がしっかりと寄せられる程度の重量設定がもっとも効率的です。
広背筋側部に効果の高いバーベル筋トレ
①バーベルプルオーバー
バーベルプルオーバーは肘の位置と曲げ方により、大胸筋に効いたり広背筋側部に効いたりする特種な筋トレ種目です。
広背筋をターゲットにする場合は、グリップを広くとり肘を開き、肘を伸ばしたまま動作をするのが正しいフォームです。
このため、プルオーバーのなかでも広背筋狙いのものをストレートアームプルオーバーと呼んで、大胸筋狙いのベントアームプルオーバーと区別したりします。
なお、こちらの図は大胸筋がターゲットのベントアームバーベルプルオーバーの模範的フォームです。
◆バーベルプルオーバーのやり方と動作ポイント
①ベンチに仰向けになり、肘を伸ばして胸の上でバーベルを構える
②肘を伸ばしたまま、肩甲骨を開きながらバーベルを頭の後ろに下ろす
③肩甲骨を寄せながら、肘を伸ばしたままでバーベルを元の位置まで上げていく
④バーベルを上げたら、肘を外に張り出し肩甲骨を寄せきって背筋群を完全収縮させる
◆ワンポイントアドバイス
動作の最後に肩甲骨を寄せて背筋群を収縮させることが大切で、そのためには肘を外に張り出すようなテンションをかけます
僧帽筋に効果の高いバーベル筋トレ
僧帽筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止
読みかた:そうぼうきん
英語名称:trapezius muscle
部位詳細:上部|中部|下部
起始:後頭骨上項線・外後頭隆起・頚椎棘突起|第7頚椎・第1~3胸椎棘突起|第4~12胸椎棘突起
停止:肩甲棘・肩峰
①バーベルショルダーシュラッグ
僧帽筋に効果の高いバーベル筋トレがバーベルシュラッグです。シュラッグとは「肩をすぼめる」という意味ですが、まさに肩をすぼめるように肩甲骨を寄せるのが正しいフォームになります。
デッドリフトのフィニッシュの動作だけを切り取った種目であるとイメージするとよいでしょう。
◆バーベルショルダーシュラッグのやり方と動作ポイント
①背すじを伸ばして立ち、肘を伸ばし腕を下ろした位置でシャフトをグリップして構える
②肘を伸ばしたまま肩甲骨を引き寄せてバーベルを引き上げていく
③肩甲骨を引き寄せたら、顎をやや上げて僧帽筋を完全収縮させる
④ウエイトに耐えながら、筋肉に効かせつつ元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
肩関節や肘関節を動かしてしまうと、僧帽筋から負荷が逃げてしまいますので肩甲骨を寄せる動作だけに集中して行ってください。
脊柱起立筋も鍛えたい
長背筋群・脊柱起立筋の英語名称・構造・部位詳細
読みかた:せきちゅうきりつきん
英語名称:erector spinae muscle
部位詳細:腸肋筋|最長筋|棘筋
長背筋群=脊柱起立筋+多裂筋+回旋筋など
背筋の筋トレと言えば、どうしてもアウターマッスルである僧帽筋と広背筋に偏りがちですが、さらに深層にあるインナーマッスルの長背筋群(最長筋・多裂筋・脊柱起立筋など)もあわせて鍛えていきたいものです。
長背筋群には体幹を伸展させる作用のほか、脊柱を支え姿勢を維持する作用があるので、この部位の強さはスポーツ競技のみならず日常でも大いに役立ちます。
①バーベルグッドモーニング
長背筋群に効果的なバーベル筋トレ種目がバーベルグッドモーニングです。
なお、長背筋群は僧帽筋や広背筋と違いインナーマッスルなので、20レップ以上の低負荷高レップでトレーニングを行ってください。
◆バーベルグッドモーニングのやり方と動作ポイント
①バーベルを肩に担ぎ、背すじを伸ばして構える
②背中を丸めないように気をつけ、上半身を倒していく
③上半身を倒したら、ゆっくりと効かせながら元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
背中が丸くなると腰を痛めるリスクがありますので、前を見て背すじを伸ばした状態を保ってください。また、転倒のおそれがありますので、上半身は90度以上倒さないようにします。
筋肉の名称と作用
身体を鍛えていく上で、まず理解したいのが全身の主な筋肉の名称と作用です。それぞれの筋肉の役割を知ることで、効率のよいトレーニングを行うことが可能になります。
▼筋肉名称デジタル図鑑
【筋肉名称デジタル図鑑】各部位の名前・作用・筋トレ方法(鍛え方)
身体を鍛えたら食事にも気を使う
筋トレの効果を高める食事や栄養の知識がなければ、いくらトレーニングだけを頑張っても大きな効果は得られません。下記の記事では、三大栄養素に関する基礎知識から、筋トレ目的別の食事メニューの基本理論、具体的な食品食材、実際の筋肥大期と減量期の食事レシピを解説・ご紹介しています。
▼筋トレの効果を高める食事